story

□未完成な私
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「そんで、そのアクマを追って来てたんだけど、あの黒いでっかいのに連れてかれて…」


「で、こいつ(黒い球体)の下にいた俺を発見した、と?」


「Yes!!」


「(…うぜぇ)結局お前も俺と同じか」



今度は神田が自分の事を話した。

フランスからここまで、アクマが大群で移動していた事と、ラビと同じく誘われるようにここに来たと。


それからこの先になにかあるはず、という予測も兼ねてラビに説明した。



「ユウもだったんか。んで、このデカいのどうする?」


「さぁな、このまま…」


『―滅――』



神田が言いかけるとまた、先程に響いたものが鳴った。


「またっ!?」


「これ…声さ?」



ラビは今初めて聞いたかのようなリアクションをし、神田に聞く。

ラビは遠方からやって来て、先程のこの声の事を知らなかった。


その声が響くと、空中に広がっていた大きな黒い球体はアクマ共々砕け散った。


砕けるというより、姿そのものが消滅したと言う方が合っているだろう。


その姿は完全に消し去られた。


黒い大きな影で覆われていた神田達は消滅したと同時に、漸く太陽の光を浴び、足元に自分の影が戻ってきた。


「…!」


「眩しっ…!?」



暗いところに慣れてしまっていた神田達は、一瞬だけ眩しさで辺りを見失った。


それから段々と明るさに慣れ、神田達は真っ正面を見る。



そこには、遠くではあるが一つだけ縦長の影があった。




あれは…




「――…玲子?」




上を向き、空を眺めている一人の人。


服装は違い、髪は伸びて長かったが、それは間違いなく玲子だった。



玲子も神田達の掛けた声に気付いたのか、呼ばれた方を向いた。


だが、玲子はそれが神田達だと分かると顔色を変えて逃げて行った。



「なっ…!あ、おい!玲子!!」


「玲子!?何で逃げるさ!?!?」



声を掛けても振り返る事すらしない玲子。


その場から逃げるように走り去って行く。



「チッ…!おいラビ!玲子は任せた!俺はコムイに連絡してくる!!」


「分かったさ!!」



ここでは無線が使えないため、神田は電話の通じる所まで行かなければならなかった。


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