story

□闇に消失
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暗い、世界に目を覚ます。



暗闇の中で一人立っている玲子。


あの神のいるような所ではない。


ここは―…?


何も無い、ただひたすらに黒が広がる。


辺り一面黒一色。


音も、色も、何も無い。


ここは何処だ?


玲子はその暗闇の中を歩いた。


歩けば聞こえるはずの自分の足音すら響かない。


ここは一体…。





――‥クスクス‥‥――





鈴のような笑い声…。



クスクス




その暗闇に唯一響く音。



玲子は辺りを見渡すが誰ひとりとしていない。



クスクスクス



先程よりも大きくなっている声。


クスクス



クスクス




クスクス




鈴のような笑い声が近付いき、次第に大きくなっていく。


黒い空間にはその笑い声しか響かない。


不気味だと思った。


そしてついには玲子の耳元までやってきた。


クスクス


『…誰?』


後ろから確かに聞こえた笑い声。


だが、振り向いてもそこには誰もいない。


鼓膜に張り付いているかと錯覚を起こすくらい、その声は玲子の頭に響いている。


『くっ……だれ!』


頭痛を催すその声ははっきりと聞こえるようになってきた。



―お前、可哀相…クスクス




声はするのに姿が見えない声の主は玲子に言った。


―可哀相、かわいそう、カワイソウ…クスクス



言葉を発しながらも笑うことを忘れない。


何が可哀相なのか意味が分からない。


『…可哀相?何が?』


―お前、かわいそう


意味の分からない事を言い、またあの声が響く。


―あんなのと一緒になっちゃってかわいそう


『あんなの?』


―だってあの力は厄介だよ?


あの力…?


―その力を手に入れたお前は、アクマだ…クスクス



『…あたしがアクマ?冗談はやめて、あたしは人間だ』


―そうかい?じゃあ、あそこを見てごらんよ


頭に響く声がそう言うと、薄く光る所が現れた。


玲子はその明るくなっている所に近付いてみる。


近付くにつれ、何か黒い山があることに気付いた。


そしてまた近付けば、その黒い山の正体が現れる。


『あれは…!』


玲子はそこにある山の正体を見つけた。


山の正体は大量のアクマの残骸。


不思議な事に、そのアクマの全ては石化している。


一体誰が…


―あれ、全部やったのお前


声は面白そうに玲子にそう告げる。


『何だって…?』


あれ、全てあたしが…?


そんな記憶は無い。


戦った覚えも無い。


『やってない、あたしはやってない』


―お前がやった、お前が全部壊した!


声は高らかに笑う。


―今だってほら、あそこでやってる…クスクス



ぼんやりと明かりを灯している場所に玲子は目をやった。


そこに見えるはもう一人の自分。


もう一人の自分はアクマを破壊している。


気迫は阿修羅のように、表情は笑みを零しながら楽しそうにアクマを破壊している。


『あたしが、もう一人…』


アクマを破壊し尽くしていた。

アクマを破壊しているもう一人の自分の勢いは止まらず刃は次のモノへと移された。



『そんなっ…!?』



刃は刃の先にいるのは、教団の仲間達。


『だめっ!…やめて!!』


クスクス
…さぁ、やってしまえ…。


仲間に刃を振り下ろす自分。




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