story

□闇に消失
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『…ッ!!やめろぉぉおおぉ!!!!』


攻撃をやめそうに無い自分の前に立ちはだかり、止めようとする。


だが、もう一人の自分は玲子を透り抜け刃を振り下ろした。


仲間の危機にも関わらず、ここは夢なのだと、冷静に見ている自分がいた。

そこの光景を眺めている間にも、仲間達は次々と倒れていく。


狂っている自分を止めることも出来ず、ただ立ち尽くしているだけの玲子。


―酷い奴だな、お前。皆殺しにした……クスクス



目の前に広がるは、アクマと仲間の変わり果てた姿。


その光景に、玲子はただ首を横に振る事しか出来なかった。


『ちがう…、あたしじゃない』


―違わない。お前が全部やったクスクス



『違うっ!そんなことするもんか!!…大切な、仲間なのに』


玲子はその場に膝を着いた。


―仲間ァ?本当にそう思ってるの?クスクス



その声は嫌気がさすくらい、明るく、楽しそうな声だった。


『当たり前だ!』


―じゃあ何で刃を向けたのさ?


『…そ、それは』


分からない…


―ホラね。答えられない。所詮お前はそういう奴だ…クスッ

アクマだ!化け物だ!!
あははハはハハはハはハは!!!!


『違うっ!!』


―…認めろよ。



やれ



その声を合図に、もう一人の自分は玲子の事を見る。


そして


―甘ったれはいらないよ。さぁ、消してしまえ



もう一人の自分は、玲子に刃を振り下ろした。










『―…‥はッ!』


目が覚めるとそこは無機質な部屋だった。


『はっ…はっ……』


汗だくになりながら身を起こす。


額は汗で濡れている。


玲子はもう一度辺りを見渡し、場所を確認する。


『…あたしの、部屋』


薄暗くて広い部屋は確かに玲子の部屋だった。


『夢、か…』


玲子は額の汗を拭い息を吐く。


嫌な夢だった。


まるで自分にそうなれと言っているような。


アクマを壊し、仲間に手をかけ、自分に殺されそうになった。


その夢を思い出したら急に身体が震え始めた。


恐かった。


殺されそうになった事ではなく、平気で人を危めている自分が恐かった。


笑っていて、無気味なまでに迷いのない身動き、少しも躊躇していない自分が恐かった。


『…うっ』


途端、頭に激痛が走った。


耐え切れずか、恐ろしくてか、涙が流れた。




コンコン


部屋の扉に軽いノック音が鳴る。


玲子は一瞬身体がびくりと飛び跳ね、扉を見た。


「玲子、起きてる?」


『リ、ナリー…?』


「玲子?入るよ?」


かちゃりとドアを引き、怖ず怖ずと部屋に入って来るリナリー。


「よかった。目が覚めたのね」


『うん…』


心なしか、リナリーの顔を見て少し安心した玲子。


良かった、生きてる。


現実だ。



「あのね…兄さんが呼んでる。行きましょう?」


またか


『ちょっと待って。シャワー浴びるから』


リナリーを少しの間待たせて、玲子はシャワーと着替えを済ませ、共にコムイの所へ行った。




「やぁ玲子ちゃん、もう平気?」


にこやかに手を振り玲子に歩み寄るコムイ。


『はあ、お蔭様で…』


「そんな暗い顔しないでさぁ、はい!玲子にプレゼント♪」


『……プレゼント?』


何の脈絡があってのプレゼントなのだろう。



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