story
□闇に消失
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難しい事を考えたらお腹が空いた。
なんて脳天気なんだろう。
玲子は自嘲気味に笑った。
…走ってきたからの間違いじゃないだろうか?
路地の弁当屋でフランスパンを一本丸々買うと、玲子は豪快にもそのフランスパンに噛り付いた。
先程考えていた事を考えながら玲子は街を歩く。
人間とアクマとエクソシスト、それぞれの事を考えている。
食べ物を食べてか、環境が変わってか、段々落ち着きを取り戻していく玲子。
恐らく後者だろう。
大勢の人に囲まれながら考え事をすると、人の安全の事も考える。
当たり前なのだが、教団の中で悩むとではやはり違う。
教団の中では固定観念があるせいか、エクソシストとアクマだけで考えてしまう。
それはまだ自分がこちらに馴染み切れていないからだろうと玲子は思う。
ただ唯一エクソシストやイノセンス、アクマに関係のない人達の中にいると、自分もやっぱり人間なのだと実感する。
そのためか、外に出た方が考えがまとまりやすくなるのだ。
『まずはイノセンスを知る事。次にエクソシストとして仕事に慣れるのが優先だね…』
コムイさんとはまだまだ信頼関係を結ぶ事は出来ていないけど、あのコムイさんだ、そう上手くはいくまい。
玲子は優先順位を決め考えをまとめる。
あの夢の事も気になるが、今はそんな事どうでもいい。
今は仕事に慣れることが、イノセンスに慣れることが優先だ。
考えがまとまってすっきりしたのか、玲子の面立ちは明るくなっていた。
『さて!帰るか!』
前向きな所が玲子の良い所。
黙々と考え込んでいた玲子は引き返そうと足を反対に向ける。
『…って、あれ?ここどこ?』
考え事をしていた玲子は回りが見えなかったのか、いつの間にか裏路地に出てしまっていた。
そして黙々と食べ続けていたらしいフランスパンは三分の一まで食べ終えていた。
裏路地とあって、辺りは薄暗い。
『うわ、なんか不気味…。早く帰って…』
急いで帰ろうとし、踵を返すと、玲子の視野の中に小さな影を確認した。
『こ、子供…?』
玲子の視界に入って来ていたのは10才未満の子供。
その子供は玲子の袖を掴んで離さなかった。
『どうしたの?迷子?』
一応聞いてみたが、子供は無反応。
『困ったな、一緒に行く?』
「お姉ちゃん……」
玲子は子供の手を引き表ひ出ようとすると、反応を示さなかった子供は強く玲子の袖を掴む。
迷子で心細いのだろうか。
『どうしたの?』
玲子は出来る限り不安を与えないようにそっと子供の肩に触れた。
「…ぉ腹、すいたの…」
『え?あぁ、ならこれ…』
玲子は手に持っていたフランスパンの食べかけの部分をちぎり、その子へ渡す。
その子は始めは素直に受け取ったが、次にはそれを地面へと叩き付けた。
『ちょっ!勿体ないじゃない!』
「ゴ最もな発言ありガとう」
何だ?
子供らしくない喋り方だ。
それに、掴んでいる手の握力は尋常ではない。
喋り方も、片言だ。
まさか、まさか
「ワタシの腹を満タしてくれるカ?」
気色の悪い笑みを浮かべて子供は身体全身を鳴らし始めた。
見れば直ぐに分かるその姿。
『ア…クマ…』
玲子はゴクリと喉を鳴らした。
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