story

□闇に消失
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「君のイノセンスは眼。それから能力は金縛りかな」


『何でそんな事が分かるんですか?』


コムイは苦笑し、さっき自分がなったから、と言った。


流石にいきなり動けなくなった事に驚きはしたが、この能力は凄いだろう。


玲子の眼を見れば誰でも金縛りにあう。


これを有効に活用出来れば、アクマの破壊も簡単になるだろう。


コムイは素直に玲子のイノセンスに関心を持った。


一方玲子はというと、自分のイノセンスに対して少し混乱していた。


アクマだけなら未だしも、仲間や普通の人間である人々にもこの力は効いてしまうのだろうか。


これは、余り良いイノセンスではないかもしれない。


能力が金縛りだけなら良いのだが、生憎イノセンスには第二開放やらなんやらで、攻撃の種類は増えてくる。


効果も、金縛りだけでは済まされないかもしれない。


それまでに、このイノセンスを使いこなせるようにならなくては。


『…説明、ありがとうございましたコムイさん』


「?どう致しまして」


『ちょっと気分転換に外行ってきますね』


「え?あ、うん。気をつけてね」


玲子はコムイに頭を下げ、団服も貰わずに室長室から出て行った。


玲子は廊下を走って教団の外へと向かう。



「やほ☆玲子!」


反対方向から聞き覚えのある明るい声が玲子の耳に入った。


『あ、ラビ…』


反対方向からは任務から帰って来たであろう神田とラビが歩いていた。


「ただいまさ♪」


『おかえり…』


いつものように玲子は笑顔で迎え任務はどうだったか聞こうと努めたが、それは出来なかった。


今の玲子は自分のイノセンスの事で頭が一杯だった。



なぜか浮かない顔をして俯いている玲子を不思議に思う神田とラビ。


「どうした…?」


神田は玲子にそう聞いてみたが、玲子は何でもないと言って走り去って行ってしまった。


神田とラビは玲子の異変に気付きながら、二人は室長室へと歩み出した。










『…はぁ…はぁっ…』


ひたすら教団外へと走った玲子。


イギリスの町並みが玲子の目に写る。


賑わう路地。


行き交う人々は皆穏やかな顔付きをしている。


(普通に平和そうに見えるのに…)


裏側では醜い悲劇との争い。


神、イノセンスの争奪戦。


なんて醜いんだろう。


それでも、それは守るべき者を守るために必要なもの。


そのためにエクソシストはアクマを破壊し、平和をもたらさなければならない。


人間を守り、人間の中に紛れ込んているアクマを破壊する。


それなのに…


『…あたしのイノセンスは人をも傷つけるのか……』


このままイノセンスの能力が制御出来なくて、人間に被害を与えてしまったら?


弱いまま教団の足手まといになってしまったら?



もし



仲間を傷付けてしまったら―?



ふと、今朝の夢が蘇る。


まさか―…


いや、それはない。


きっと偶然だ。


この眼、イノセンスに適合したのは偶然で、あの夢は何の関係もない。


そう、ただの偶然…。


それでも、あたしはどうしたらいいのだろう。



ぐうぅぅ〜



『…ははっ、真剣な雰囲気が台なし』


玲子は腹の音で漸く笑った。



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