story
□掌の温もりを
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壊れたアクマ。
残ったのは鋼鉄の針、四本。
玲子はその針を全て拾い集めて鞄の中にしまう。
取り敢えず、初の長期任務は無事完了した。
「さて、お嬢さん」
『ん?』
玲子はラビと教会の中を探索していた。アクマがいた教会だったが、特に危ないものは無かった。
このままほっといても害にはならない事を確かめて、教団に戻る事にしたのだ。
「特に危ないものは無かったし、この教会このままでも平気そうだな」
『そうですね』
肩を軽くコキッと鳴らしながらラビは玲子にそう言った。
「そういえば、見たとこファインダーみたいだけど、俺はラビ。自己紹介まだだったよな」
これからよろしくさ、と言ってラビは歯を見せて明るく笑った。
玲子もその笑顔につられて笑う。
『あ、あたしは…』
「玲子、だろ?」
玲子が名乗る前にラビは玲子の名前を呼ぶ。名乗った覚えは無いのだが、と玲子は疑問に思う。
「さっき破壊したアクマがそう呼んでたさ…」
『…そっか』
少しだけ暗い雰囲気になった。玲子はカーフェイの事を思い出し、また俯いた。
ラビはそんな玲子に気付き、内心焦りながら言葉を繋ぐ。
「さて、帰るか!なっ」
小さい子供をあやすようにラビは玲子の手を取り引く。
『…うんっ!』
玲子はラビに手を引かれ、教会の外まで出ていくと、ラビは辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「…なぁ」
『はい?』
「教団ってあっちの方?」
そう言ってラビは教団の影すら見えない空を指差した。
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