story
□月日始まる刻 前編
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『…じゃあ神田。頑張るからね』
「あぁ」
『……五ヶ月間、会えないのか…』
玲子はボソリと呟いた。
「五ヶ月なんてあっという間だろ」
神田は玲子の呟きにたいし、素っ気なく返した。それもそうだね、と玲子は苦笑しながらその会話を終わらせた。
『神田はどの辺まで行くの?汽車は?』
「…違う汽車だな。お前が乗る汽車の二つ後だ」
『そっか…』
教団にいた時は、初任務だとはしゃいでいた玲子だったが、今になって心細くなってしまったようだ。心細そうに会話をしながらも、玲子は器用に建物をひょいひょいと飛び超えて行く。
「(何なんだコイツは…υ)」
弱音を吐いているのか、やる気満々なのかよく分からない。
神田は理解に苦労した。
『神田、あたしこの汽車だから…』
玲子は今も尚走り続けている汽車を指差した。
飛び乗り乗車しに、玲子は汽車へと飛び向かう。
「…玲子!」
汽車へ飛び空中に浮いた玲子、その時神田は玲子の名前を呼んだ。
玲子はまだ汽車に足が着かない状態で神田を見る。
「頑張れよ…」
神田の送り言葉に、玲子は宙に浮いたまま驚き、微笑んだ。神田は鉄の橋の上で立ったまま玲子を見送った。神田に向けて、玲子は親指を突き立てるサインをした。
玲子は汽車に着地し終えると、神田の姿はだんだん小さくなっていくのが見えた。
玲子は小さくなっていく神田を見送った。
神田もまた、小さくなる玲子を見送った。
『…頑張るよ、神田……』
ありがとう、お陰で少し楽になったよ。神田の不思議なパワーをもらったよ。
玲子は汽車の中へと入っていった。
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