story

□月日始まる刻 前編
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教団側に入ったばかりだというのに、早速人を疑い始めた。
こんな事がこれから続くのだろうか。これから自分達が守っていく者を疑いながら。
虚しいと思った。




「どっ、泥棒ー!!」


不意に聞こえた荒けた声に、街行く人々は振り返る。バッグを抱えて走って行く男が一人。


「誰か捕まえてー!!」


バッグを盗られた女性は必死に叫ぶ。


「しゃーねぇ、いっちょやるか」


ラビはまだ慣れていない自分のイノセンスを取り出す。


「大槌小槌…」


ラビがそう唱えている時に、女性に帽子を被った人が近寄る。


『大丈夫ですか?お怪我は?…後は任せてください』


そう言って犯人へと駆け出した。

その人は犯人と取っ組み合いになり、バッグを取り返そうとするが、犯人はなかなか放さない。その状況を見て、ラビは加勢すべきか迷う。

しかし、ラビが迷っている間に事は済んだ。


『…はっ!!』


犯人を捕まえようとしていた人が、犯人を大きく回転させ投げ飛ばし押さえ付けたのだ。


「すげー…」


ラビは心の底からその人物を尊敬した。


『誰か警察を呼んでもらえませんか?』


そう叫ぶと、反対方向から警察が走って来た。


「話は被害者の女性から聞いています。ご協力感謝致します」


警察は犯人を連れて行ってしまった。
ラビは投げ飛ばした人物に興味を持ち、近寄る。


「凄かったさ。そんなに細いのにどうやって投げ飛ばしたん?」

『え…?』


いきなり話し掛けられ、驚いているようだ。ラビが話し掛けた人物は驚いて固まっている。深く被っていた帽子を上げてラビの事を見た。

一瞬、息をするのを忘れていた。

ラビは帽子を上げた人物に見惚れていた。


『あの…?』


覗き込んでくるその人になぜか鼓動が速くなる。


「あっ、いや…何でもない」

『そうですか、それじゃあ俺行きますんで…失礼します』

「あ、おう…」


走り去っていく人物をぼけっと眺めているラビ。


………ん?

……俺?今あの子俺って言った?!
って事は…あの子男なん!?


「ショックさぁ…」


好みの顔だったのに、とラビは落ち込む。




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