story

□月日始まる刻 前編
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辺りはまだ正午過ぎ。

そんな時刻に、シルクハットを被った少し太った人影が一つ。傘を回して歩き出す。
その人物が向かっているのは、とある教会。



「我輩の可愛い可愛いアクマちゃん。昨日は例の"あの眼"を見つけられましたカ♪?」

「いいえ、見つけられませんでした。伯爵様、"あの眼"は一体何処にあるのでしょう…」


可愛いアクマと呼ばれたその人物は"伯爵様"と言って会話をする。

アクマとはAKUMAという兵器。その兵器を製造しているのが、伯爵様と呼ばれた千年伯爵。
千年伯爵がアクマを可愛がるのは、人を殺す度に強くなり進化していくからだ。

製造者と兵器の上下関係。

製造者の言う事は絶対服従。


「あの眼は女性を好みまスv女性が持っている可能性が高いでスv

……女性を狙いなさイ。そうすれば見つかるはずでスv!」


千年伯爵は"あの眼"と呼ばれる何かを探しているようだ。女性ばかり狙われるのはそのせいなのだ。


「あの眼は向こうに渡ると厄介でスv早急に見つけ出してくださいネv」

「承知しました」


アクマの返事を聞いた千年伯爵は、黒い闇をまとって消えて行った。






「やっぱ外の空気は良いさぁ」


教団を抜け出したラビは外に出るなりはしゃぎ始めた。


「じっとしてんのは性に合わねぇかんなぁ〜」


本当は部屋にこもって本でも読もうかと迷ったが、やはり外の方が気持ち良い。


「なぁ〜んかねぇかなぁ」


賑やかな町並みをラビは一人で歩いていく。
すれ違う人々は皆、朗らかで柔らかい表情、幸せそうな顔だ。こんなにも人間の世界は平和なのに、何故戦いなんがかがあるのだろう。


「(俺はエクソシストで、人間の中に潜むアクマとこれから戦うのか…)」


ふと、ラビの頭が冴える。
この大勢の人間はアクマを知らない。

存在自体知らないのだ。

知っているのはごく僅かな人間と、教団側の人間だけだ。その中にアクマは潜んでいる。



ここにいる人間は本当に人間か?




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