story
□初任務
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「…玲子」
『何、神田?』
科学班を出た玲子と神田は、長く続く廊下を歩いていた。
「へますんじゃねぇぞ」
『なっ…!?うっさい!初任務なんだからへまなんかしてたまるか!?そっちこそ油断してへまするんじゃないよ!!』
「お前、誰に向かって物言ってやがる…」
神田の手は玲子の頬に触れた。
『…え、え!?神田?』
玲子の頬に沿えられている神田の手。
玲子は神田のその行為に驚く。
…まさか……
神田の手は少し冷えていて、玲子の頬を冷たく冷やす。
じっと動かない神田の手。
が、次の瞬間…
「下らない事言ってんのはこの口か?あ?」
『いっ…!いひゃい!あいふんほ、はんは!!(いっ…!痛い!何すんの、神田!!)』
神田は玲子の頬を抓り、引っ張った。
「お前が下らねぇ事言ってるからだ」
『らっへ、ほんほうおほほひゃん(だって本当の事じゃん)……あ゛――っ!!』
神田は今度、両手で玲子の頬を抓り、引っ張る。
それと同時に玲子の悲鳴が響く。
「無駄口叩くんじゃねぇよ、新人が」
『うー、酷い…』
抓られた両頬を摩りながら恨めしげに神田の睨む玲子。
少し涙目だ。
強い力で抓られたため、玲子の頬は赤くなっていた。
結構強い力で抓られて、かなり痛そうだ。
玲子は頬を摩りながら神田に話をする。
『さっきリーバー班長に言われたんだけどね…』
「あ?何を?」
『服装を変えろ、だって』
「まぁ、お前の格好は今の季節に合ってないしな」
神田が言っているのは玲子の今の格好。
季節は12月の真冬。
それなのに玲子は、ハイネックの長袖はともかくショートパンツをはいている。
この寒空にその格好はないだろう。
神田がそんな事を考えていると、玲子から違う言葉が返って来た。
『あ、違う違う。そんなんじゃないよ』
「違う?どういう意味だよ?」
『任務に差し違えないように、男装して行け、だってさ』
「男装?任務で差し違えないようにって、なんでそんな事しなきゃいけねぇんだよ」
『内緒♪あたしの任務だからね。とにかく今から着替えに行ってくるから、待ってて!』
「…早くしろよ。早めに任務に行きたいからな」
玲子は神田に『ラジャー』っと言って、走って自分の部屋に向かった。
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