story
□初任務
4ページ/10ページ
「…彼女にはファインダーになれるまで、使わないことにしたよ」
「…?」
リーバーは眉間に皺を寄せながらコムイの答えを待った。だが、なかなかコムイからの答えは返って来ない。
「玲子に何があるって言うんですか?」
リーバーは痺れを切らせてコムイに答えを求める。
「憶測でこんな事言うべきじゃないんだろうけど、玲子ちゃんはもしかしたら…」
リーバーの眉間の皺は更に深くなって、疑問符を浮かべた。コムイの言いたい事が分からないようだ。
「…玲子がなんです?」
「…普通の人間じゃないんじゃないかな…」
コムイは額に当てていた手を外し、今度は眼鏡をかけ直した。
"室長"の顔だ。
「彼女がいきなり門番の前に現れたのはリーバー君も知っているよね?」
「まあ、その場面を見てましたからね」
「手品みたいに現れた、そう言ったね?」
「はい」
「普通の人間にそんな事は不可能だ。そんな芸当が出来るのはエクソシストかアクマくらい。だけど、生憎彼女は普通の人間だった」
コムイは最近玲子について考えていた事をリーバーに話した。玲子が現れた時のことを思い出しながら話す。
「普通の人間がそんな芸当が出来るはずないのに彼女はした。だったら普通に考えてイノセンスに魅入られてもいいはずだ。可能性も高いはずだよ」
「…けど玲子はイノセンスに魅入られていない子だった。だから普通の人間ではないと?」
「…それは、僕の勝手な考えなんだけどね」
「考え過ぎじゃないすか?玲子に怪しい所なんて無かったんですから…」
リーバーは玲子に任務の事について説明をしている時の事を思い出した。リーバーが説明をしている間、玲子は真剣に説明を聞いていた。
時折、任務について分からない所を質問してきた。玲子は任務にたいして、物凄く真剣に取り組もうとしていたのがよく伝わって来たのだ。
リーバーは、そんな玲子に怪しむ所は無いだろうと思ったのだ。
「疑心暗鬼になってしまうのは分かりますが、なり過ぎるのも良くないっすよ?」
「……うん」
コムイはリーバーの言葉にそう返したが、疑惑は振り切れ無かった。
(……玲子ちゃん、君は一体何者なんだ…?)
「室長?川の方に行きますよ」
リーバーに促され、コムイ達は教団内に流れる川の方に降りて行った。
.