story
□黒い世界へ
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『―…う』
玲子は今、時空移動の反動で失っていた意識を取り戻した。
『…はー、ぅえ…。これには慣れないな。まだ頭がグラグラする』
玲子は辺りを見回し、ここは何処かを確認する。薄暗いここにはコウモリみたいなものが遠くに飛んでいる。結構な数だ。
ふと何かに気が付いて視線を前に向けると…
ギョロッ
『…ッ!!?』
玲子は声にならない悲鳴をあげる。玲子の目の前にいたのは、壁と同化しているであろう、門番だった。
『(も…もも、門番!?何で!?うわっ、めちゃくちゃ見てる!?不気味!!!)』
などと思っていた。
覚醒したばかりの意識では今の状況を知るには無理がある。現実とごちゃまぜになっているのだ。
玲子が冷静に物事を判断できるようになるのは、この後だった。
「一匹か…いい度胸だな」
「悪いけど捕縛させてもらうわ」
玲子声がしたのでその方向を見てみる。その声は門番の上からした。門番の上には二つの影。
何か言ったかと思うと、その二つの影は急降下して落ちてきた。
『うわっ!!危ないって!!戻れ!!』
玲子は自分を狙って落ちて来ていることなど知らずに、落ちてきた影の心配をする。落ちているのに戻ることはまず出来ないだろう…。
「…他人の心配をするなんてたいした余裕だな」
「早く終わらそう神田」
落下しながら会話をする二人。一つの影に向かってそれぞれ攻撃の体制に入る。
『(だっ、大丈夫か!?あの二人)』
段々近づいてくる影に目を懲らす。
あれは……
その人物達を確認すると同時に、二人の攻撃を受ける。
『だわッ!?危なッ…!何すんだ!!いきな……』
目の前にいる人物を確認すると、玲子は唖然呆然騒然愕然する。
な、何で…
何で、いる。
目の前にいるのは間違いなく、神田とリナリーであって。
『(何、これ……。夢…?)』
…夢?
《物語…じゃなかった!事の先や人物を知っていたとしても絶対に口から出すな。》
まるで今の事を注告するかのようにあの男は言っていた。
『(何で…、何でだ!?どうしてあの男、あたしをこの世界に落とした!?)』
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