story

□序章
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文化祭は大賑わいだった。

なんせ、あの注目を浴びている演劇が始まるから。
といっても演劇をするのは演劇部ではない。茶道部主演なのだ。

変わった茶道部の変わった発案により、茶道部は演劇をすることになった。しかもその演劇は、弓道部、剣道部、茶道部の合同演劇。

今日がその演劇を披露する日だった。



演劇の舞台は戦国時代後期。

演劇の内容は、姫を守る忍の物語。忍は命を賭けて、敵軍の忍から姫を守り、そしてその忍は見事に姫を守りぬき、お互いに特別な感情を持ってしまう。

それに気付いた殿様はあろうことか、その忍を殺してしまい、姫と忍は永遠に結ばれることはなかった、という切ない物語なのだ。



その物語を脚本したのが、彼女のいる茶道部だった。









文化祭の三週間前、演劇の配役を決める時、その忍役は直ぐに決まった。


「忍役は玲子で決まりでしょ」

「うん、あたしもそう思う!」

「ぴったりだよ、きっと」


次々と賛成の声が挙がる中で、納得いかない顔をしている少女が一人。忍役に抜擢された玲子である。


『ちょっとちょっと、何勝手に決めてんの!何名前書いてんの!』


玲子は荒けた声をだす。
それはそうだ。
自分が納得していないのに勝手に配役を決められたのだから。しかし、女生徒は平然と、当たり前のように…


「こーんな凛々しい役、玲子以外に誰がいんのよ」

「それにさ、多分他にこの役出来る人いないと思うよ〜」

「男子は嫌だしね」

「「そーそー」」


忍に抜擢された玲子は、確かに文化部にしておくには勿体ない程の運動神経と反射神経を持っていた。ついでに導体視力も良い。
そして、茶道部で鍛えた礼儀作法が彼女を凛々しく引き立てている。

そのため、とある女生徒の運営するファンクラブがあるとかないとか…。しかし当の本人はその能力を生かそうとしない。本人曰く、「めんどくさい」との事。その性格がさらに女生徒のハートをがっちり掴んでしまい、さっぱりし過ぎな所が、返って女生徒からの注目を浴びている。

そんな性格故に、運動部や演劇部からの勧誘が絶えない。
玲子にとってはいい迷惑である。


『やだよ。あたしはそんな役やりたくない!主役なんか余計嫌だよ』

「ダメだよー。他に出来る人いないから玲子に決定」

『なっ』


玲子は少なくとも、今の発言している女生徒が悪魔のように見えていることだろう。有無を言わせず、実行へと繋げていく辺りがひどいのだ。



『(大体なんでこんな強制的なんだ)』

「納得いかないって顔しないでよ〜」

『なるに決まってんじゃん』

「だってー、この忍は矢をかわしたりー刀を交えたりするんだよー?」

「…そんな事、他の子にやらせたら」

「大怪我物よ〜?」


二人の女生徒は厭味ったらしく玲子に詰め寄る。



そして…




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