story

□序章
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『夢ってことは眠り続けるの?』

《そうだな、そうなる。だが時空を越えるから、向こうの世界でどんなに時間が経ってもこちらでは一秒も時間は進まない。》


『こっちの世界では時間が進む事は無いのか…。便利だなぁ』

《だが図り違えるなよ》

『…?何を?』

《いくらお前がこちらの人間だからって、向こうに行けばどんな形であろうとも、お前はその世界に存在している事になる》

『…そうだね、それが?』

《だから肉体もそこに存在する事になる》

『うん?』

《“ただの夢”なら怪我をすることはないんだが、“この夢”は生憎違うんでな》

『…まさか……』

《そのまさか、だ。これから行く世界でもし、命を落とすような事があったら現実の身体も関係なく死ぬ。だからゲームのようにやり直しは利かない。間違ってもこっちで死んでもあっちがあるから大丈夫、なんて思うなよ》

『わ、かった…』


頭で理解していても、直接口で言われると結構なショックを受ける。どちらにいても、やり直しが利かないのはどの世界も同じなのだ。


《…大丈夫か?》

『……大丈夫、同じって思えば平気』


少しハッキリ言い過ぎただろうか。かなりショックが大きいようだ。だが言っておかないと、向こうの世界では命を落としかねない。

あんな世の中だから。事前に言って置いた方がいいと思ったのだ。


《…他に、聞いておきたい事はあるか?》


出来るだけ不安を与えないように疑問に答えてあげたい。


『ぇ?あ、まだ。』

《何だ?》

『あんた、まさかとは思うけどそっちの世界の神?』

《…まあ、そんなもんだ。今更何だ?》

『なんか、あんたの物言いは神というか“創った人”みたいだったから、よく分かんなかった』


はは、と男は笑う。


《神と創った人は同じようなもんだろ?》

『まあ、そうだね。…そうだ!あたしが向こうに行っても、あんたはあたしの傍に居てくれるの?』

《生憎それは無理だ。俺はそんなに暇じゃ無いんでね》

『……』

《不満か?なら時たま顔出してやろう》


それは、夢枕に立つ…と解釈して良いのだろうか


『…気持ち悪』

《ヒドッ!》


玲子は少し(かなりだよ)酷いことを吐き捨てるとまた質問をした。


『なんであたしはあんたの声が聞こえるの?』

《俺が選んだからだ》

『選んだ理由は?』


ちょっと気になった。
神が選んだ人間の基準ってどんなだろ。神に選ばれるということは、やはり特殊な力を持っているからなのだろうか。

だとしたらあたしも何らかの力があるとか!?

玲子は胸を弾ませて男の言葉を待つ。しかし神は残酷ですね。予想もしなかった言葉が返って来たよ…。


《ん?適当に。順応能力ありそうだなーと思って》

『適当!?そんなんでいいの!?その世界絶対滅びるよ!!』

《そんな事言うなよ!》


大の男が泣いてるよ。あたしだって期待を裏切られたんだ、お互い様だろう。


『…あたしからの質問はもうないけど、あんたがあたしにその世界について注告して置きたいことはある?』


守れるかどうは分からないけど。


《…そうだな。向こうに行ったら物語…じゃなかった。事の先や人物を知っていたとしても絶対に口にするな。ややこしくなる事極まりない》


今、物語って言った。
てことは、少なくともあたしの知っている物なんだな?


《向こうに行ったら自分の事は自分でやれよ。俺は影から見守る。時折、手助けしてやらんこともないがあてにするな》


ふーん、そんな事言うんだ。このカミサマ。


『じゃあ向こうに行ったらあんたとは話せなくなるの?』

《んー、必要に応じて夢世の中に俺がお前を呼ぶよ。…そうだな、声はいつでも聞こえる様にしといてやる》

『(あ〜、忙しそうっていうか面倒クサー)』


行く前からやる気を喪失している玲子ちゃん。
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