story
□一つの願い
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そうして落ち着いたデイシャに説明をすると、ようやく理解したようだ。
デイシャにとってエクソシストには大体が男性のため、玲子のことも男だと勘違いしたようで。
加えて神田と喧嘩しても無傷、神田を納得させられる実力を持つということからマッチョな男というイメージに行き着いたらしい。
《…ザザッ…なんだよびっくりしたじゃん》
ふぃー、とため息を着くデイシャ。
《しかしまぁ女だとはなぁ、ははは!》
「…なにが可笑しい?」
デイシャは神田の行動が以外過ぎて驚きを通り越して笑いが出てしまった。
《どうしたデイシャ。やけにその話題引きずるな》
《…、いやーだってよ、神田に反発する女なんてそういないし会ってみたいじゃん?》
どんな奴なのか、みてみたい。
デイシャは一層興味を持ち、そう言った。
「ちっ、んなことより今の事考えろ」
《…あ、忘れてた》
この話題に飽きたのか、神田は今の状況を教えてやった。
やれやれといった風にマリはふうと言う。
《しゃーない。じゃあオイラと神田でマリのおっさんのとこに集合って事で。話はそれからじゃん》
身を隠していた周囲からは大きな影が現れる。
《時間は?》
とうとうそれらは姿を表し、まがまがしい殺気を放ち始める。
「夜明けまでだ」
緊迫した空気が辺りを埋め尽くす。
そして、神田の言葉を合図に三人は夜の街を舞った。
『……っくしゅん!』
「あれ、玲子さん風邪ですか?」
むずむずする鼻を押さえながら玲子は首を横に振る。
『ううん、なんだろ。花粉とかかな?』
「今の時期、ですか?」
『あ、やっぱり違うかー』
あはは、と談笑するアレンと玲子。
汽車を降りた後どうやら和解することが出来たようだ。
玲子がアレンに恐怖を抱いていた事など無かったかのように、今ではいつも通り会話を楽しんでいる。
仲間内でのゴタゴタは過ぎ去ったようだ。
いつも通りになって良かったと、ラビは二人を見てそう思っていた。
だがもう一方で仲良くなった二人を面白く思っていなかった。
「(つまんね…)」
二人を視界から外し、ぼけっと遠くの方を眺めているラビ。
すると、アレンと会話を楽しんでいた玲子が近づいて来た。
「?お話中じゃねぇのか?」
『ううん、もう終わった』
ニコニコしながら話す玲子は本当に嬉しそうだった。
『少し疲れたからそこのベンチで休もうかと思って』
クロウリー達が腰掛けているベンチを指差してそういう。
アレンと会話一通り終わらせた玲子の顔色は確かに優れていなかった。
「大丈夫か?顔色よくないぞ」
『大丈夫大丈夫!ちょっと休めば治るよ』
すぐそばにある饅頭屋のベンチを指差し、あそこで休むという仕草をした。
「リナリーが来たらすぐ行かなきゃいけねぇしな。それまで休めばいいさ」
『うん、そうする。
…あ、そうだ』
ベンチへ向かおうとした玲子。
だが一歩踏み出す前にまたラビに振り返りにっこりと笑顔を向けた。
『ありがとうラビ。ラビのお陰で話せるようになったよ』
ありがとう、ともう一度礼をいうと玲子はブックマンとクロウリーが座っているベンチへと足を踏み出した。
「…ズルイさ…」
玲子の笑顔を見て思わずドキドキと高鳴る胸に手を当ててラビは呟いた。
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