story

□鼓動
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『まったくもう…』


そうは言うが、玲子は許してくれたようで笑っていた。


『今度かはらは気をつけてよね?』


心配するから、といった玲子はとても愛しかった。


今の時代に何もなく、戦争や定めというしがらみさえ無かったら、そう思ってしまう。


「(…何も無かったら、か…)」


望んでも仕方ないことを思わせる、玲子。


この笑顔さえあれば、なんでも出来そうになるくらい、俺にとっては大切なもので。


どうしても、感情が外に出てしまう。


繕った笑顔ではなく、自然な笑顔を浮かべてしまう。



「(…でも)」



ダメなんだよな。


こればかりは深く干渉できない。

定めを知るのなら、足枷になってしまうから。


どうしようもない気持ちは、気付かぬうちに口から零れ出していた。



「……ダメなんだよな…」

『…ラビ?』

「あ、いや、何でもないさ」

『そう?でも、なんか思いつめてたような顔してたよ?』



なにか悩みでもあるの?と、そう聞いてくれる玲子の気持ちは嬉しい。


でも、同じくらい辛くさせる。



「…んー…、悩み切れなくなったらいつか、いつか玲子には話すさ」

『ん、わかった。あたしでよけれはいつでも言ってね?』



…わかった。


堪え切れなくなったら、いつか、言うから。


でも、本当に吐き出してもいいのか?


この気持ちを…。



「…いつかな」



そういうと決まって、玲子は笑顔を向けるんだ。

それが嬉しくあり、辛いことを知らずに…。












「どうやらあの二人、和解できたみたいですね」

「そうね」



遠目から二人の様子を伺っていたアレンとリナリーは、一安心だといいながら微笑を浮かべていた。



「玲子が怒るなんてどういう事かよく分からなかったけど、きっとラビを心配して怒っていたんだと思うわ」

「え、そういうものですか?」



驚いているアレンにリナリーは「そうよ」と言って返した。




「だって、玲子はそういう人だもの」


リナリーは薄く頬を染めて笑った。


「強いけど優しくて、優しいけど厳しい所も少しあるけど」


やっぱり優しくて。


自分より他人を優先するから、たまに心配になるけど。


格好よくて、内面にとても惹かれるものがある。


強くて、優しくて、厳しくて。

でも、その分脆い所もあって。



「まあ、心配させる所も玲子の魅力の一つね、可愛い所も結構あるのよ?」

「へぇ…」



リナリーの話に、同じく微笑みながら聞いているアレンだったが急に目が疼き、アクマを探知する。



「…っ!?リナリー!!」

「ぇっ…?」



何が起こったか分からないリナリーは、アレンに抱き込まれるような形で腕の中に引き込まれた。


リナリーの真後ろにいたアクマをアレンは素早くイノセンスを発動させ、破壊を試みた。


アクマから放たれる弾丸を破壊すると土埃の煙幕が辺りを包んだ。

何も見えないところに、また何か放たれる音がした。


アクマは二体いたようでアレンは死角の方をアクマに取られてしまった。



「…くっ!」

「アレン君!」



避けたらリナリーに当たる。


寄生型とは違って装備型はウイルスにやられる。


ここは、盾になるしかない。


覚悟の上、アレンはリナリーを強く抱え込んだ。





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