story

□列車事件
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『……』



汽車に乗り席を確保し座る所までは順調だった。



「「…………」」



顔を引き攣らせてアレンとラビは玲子を見ている。


いや、玲子の隣に座っているクロウリーを見ていた。



「そんな落ち込むなってクロちゃぁーん」



隣にはどんよりと落ち込み、座席の上で体育座りをしているクロウリーが。



「しょうがねェだろ いくら説明しても信じてくんなかったんだから」

「だが…っ」



ラビの慰めも今のクロウリーには耳に入らない。


はあ、と涙を流しまた落ち込みに入るクロウリーの肩をポンと叩く玲子。



『クロウリーが泣いてやる必要なんかないんだよ?それより…清々したじゃん。…ねぇ?』

「…あ、うん…」

「そ、そうですねぇ…あはは」



笑顔で聞き返してくる玲子に、目を泳がせどもり混じりの返事しか返せない二人。


玲子が笑顔である理由、村での一部始終を思いださざるを得なくなった。










「アクマを退治していただと!?そんな馬鹿な話信じられるものか」

『で…ですから最後まで聞いてください』



村人に事情を話し、説明をしたが誰ひとりとして信じてもらえなかった。



「どっちにしろワシらにとっちゃ化物だ、出て行け!二度とここへは帰ってくるな!」

『お…落ち着いて話を…!』



玲子の話しなどまるで聞こうとしない。


クロウリーを追い出そうと罵声を浴びせ続けるだけ。


無意識のうちとはいえ、仮にもアクマから村人を守っていたクロウリーにはあまりにもひどい仕打ちと言える。


去れ、と一点張りで拒絶されてしまっている。



『だから話を聞いて…!』

「うるさい黙れ!貴様とて同じだ!!この
   化物共!!!











ぶつん











「……ぶつん?」

「…あれ、今ぶつんって…?」



どこからか漂う殺気。


殺気の根元は

玲子。




『………イノセンス、発動
……"莫"…』




玲子はイノセンスを発動させると莫を作り、村人達を取り囲む。



「な…何のつもりだ!」



莫を見て騒ぎ出す村人を玲子は無視。


村人を無視し、莫に指令をする。



『落とせ。うんと深くにな…』



玲子がそれを言うと莫は地面に潜り込んでいった。


しん、と僅かに静まる。


村人は頭にハテナを浮かべて首を傾げている。



「…玲子?」

「何も起こりませんでしたね」



首を傾げているのはアレン達も同じだった。


そして一人の村人が笑い出した。



「ふっ…はは、はははは!何だ今のは?単なる脅しか?
それならもう少し上手く脅せよ」



一人の村人を筆頭に次々と村人達は笑い出した。



「舐めてんのか?」

「訳の分からないものを取り巻いて、俺達がビビるとでも思ってんだろ?」



一度に玲子への非難が飛び交う。


しかし、次の瞬間



ズシンッ、と大きな地鳴りが響いた。



「うっ…うわぁぁあぁぁぁああぁ!!!!」



次々と村人は消えて言った。


と言っても、単に落ちていっただけなのだが。



「…玲子?」

「な…何をしたんですか?」



怯えながら玲子に問う二人。


それに対して玲子は笑顔で



『落とし穴に落としただけ∨』



と爽やかに言った。



「お、落とし穴…?」

「ま、まさかさっきの莫って…」



ラビが玲子にそう聞くと、玲子はニコリと微笑んで返した。



「(や、やっぱり…)」



莫で穴を掘ったんだ。


村人達が落ちたであろう落とし穴を覗き込むラビ。


落とされた奴らも気の毒に、落とし穴は数十メートルはあると思われる。



「…だ、大丈夫なんか?」

『奴ら神経図太いんだから死にはしない』



でも、寒さで死ぬかもね

と言った玲子の顔は、すごく恐かった。



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