story
□追憶
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極寒の中、一人の少年が窮地に立たされていた。
強い風吹き、髪が乱れていく。
「…オレっすか」
優れない顔をして自分を指差すラビ。
自分がこの一番端の最終車両にいるのには訳があった。
「お願いラビ!アレンくんと玲子がいないの!きっとさっきの駅で乗りそびれちゃったんだわ」
「ガキかあいつらは…ι」
「行け、今ならお前の如意棒でひとっ飛びだろ」
「槌だよパンダ∨」
それは、一つ前の駅でいなくなった二人を探しに行けとのこと。
ぐいぐいとブックマンが押してくる足を左手で受け止めるラビ。
「あの者達がいなければ前に進めんのだ」
「いいけどさー…」
ヤな予感がしてならない、とラビは渋った末、押しに負けて捜索に向かった。
ベンチに座ったまま目をつむり動かない人。
『……スー…』
静かに寝息を立てていたのは、玲子。
考え込み過ぎたのか、疲れが出たのか、目をつむるとすぐに寝入ってしまったようだ。
「もし、もしもし…?」
『…ぅ…ん…?』
「こんな所で寝てしまっては凍え死んでしまいますよ?」
『…寝…?………え!!?』
がばっと起き上がり周りを確認する玲子。
寝ぼけた目を擦って周りを見ると、すでに月が顔を出していた。
『…っぎゃー―――!!!?寝過ごしたー!!!』
「汽車…行っちゃった…」
日が暮れ、汽車の姿は既に無し。
アレンは弁当屋の男にがっちりと捕まえられてしまい、身動きが取れなかった。
「汽車…」
がらんとした駅に虚しく呟くアレンの声。
力無く汽車が去っていった方に手を伸ばし、涙する。
弁当屋は急を要する事だと言って一向に放してもらえない。
「汽車…」
もう抵抗する気力さえ沸いて来ない。
すると急にがっちりと捕まえられていた体が自由になり、見ると勢いよく頭を下げる弁当屋。
「どうか私どもの村をお救いください黒の修道士様!!」
「へ?」
それだけを聞くと、アレンは訳も分からずその男に掠われるように連れていかれるのだった。
たどり着いたのはとある村の一角。
そこへ村長は嬉々として扉を開くと、そこには武器を構えた村人達がいた。
その光景を目にしてアレンは冷や汗を流す。
嫌な予感が頭に過ぎったのだ。
村人はアレンの胸にあるローズクロスに気付き、涙を流して喜んだ。
「うおおおおおお〜!!修道士さまだー――!!!
「はー―!?」
村人は津波のようにアレンに縋り付いていった。
村人から話を聞くと、どうやらこの村のはずれに住んでいる吸血鬼を退治してほしいとのこと。
この吸血鬼により、犠牲者が出ている。
今度は自分が襲われるのではないかと村人達は怯えているのだ。
「あの、ところでなんで僕縛られてるんですか?」
話ならば普通に聞くというのに、なぜか椅子に縛り付けられ身動きが取れない。
しかし村長はそんなことは無視し、次々と吸血鬼について話を進めていく。
吸血鬼なんか今時いるもんじゃない。
アレンはそう言って村長をなだめようとした。
だが村長はいるのだと必死な顔をしてアレンを見つめた。
その顔にアレンは引いてしまい、思わず謝ってしまった。
昔から村に済んでいるという吸血鬼。
名はクロウリー男爵。
吸血鬼と恐れられた彼だったが、城に近寄りさえしなければ危害を加える事などなかった。
しかし、いつしかそんなクロウリー男爵が急変し、村人が次々と犠牲になっていった。
最初の犠牲者は老婆。
身体が蒸発してしまうまで血を吸い付くされてしまったのだ。
「うそぉ」
樽の中からいきなり現れた声とその姿に、全員身を弾ませて驚いていた。
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