story

□追憶
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「なっ何奴!?」

「ラビ!?どうしてここに?」

「お前探しにきたんさぁ」



武器を構えて警戒していた村人。


だが一人の村人がラビにもあるローズクロスに気付き村長に耳打ちをする。



「黒の修道士様がもうひとりィー!!!」



村長の声一つでまたラビも村人に捕獲されてしまう。



「やった!」
「おさえろ」



静かな夜に騒々しい暴れる物音が広がった。


軽やかにロープでラビを縛っていく村人。





『なっ…何してるんですか!?』



先程までにはなかった声。


全員の静かな視線が一つに向かう。



「「玲子!」」



アレンと同様に汽車に遅れた玲子。


どうやら玲子も地道に歩き、二人を探してここにたどり着いたようだ。


アレンとラビは一度喜び彼女の名前を呼ぶが、次には青ざめ村人を見ていた。


玲子も同じように、アレンたちと目が合い、ホッとしたのもつかの間。


しまった、と思い冷や汗が流れる。



『……あ』



見れば、にやぁ、と笑みを浮かべている村人。


玲子にじりじりと近付いていた。



『…うっ!』

「なんたる幸運!黒の修道士様がもう一人ィィィィー――ッ!!!」

「うおおぉおー!!」

「捕まえろー!!」



村人は涙ながらに喜び縄を構えて玲子に飛び掛かった。



『…ひっ!!いやぁああぁぁ!!




………ッぅラァ!!!




かけられた縄を擦り抜け玲子は周りを取り囲んでいた村人を回し蹴りで蹴飛ばし、縄の呪縛から逃れた。



『いっ…いきなり何すんだ!!
……この変態!!!


「変態!?」

「ヘンタイ…」



息を荒くして言う玲子の発言に、衝撃を受け深く傷付いた村人達。


そのへこみ姿を見てラビは苦笑した。



「(…そういや、俺も玲子に痴漢って言われたっけ)」



今じゃいい思い出だ。


ほほえましいところではないが、ついつい笑ってしまった。


昔の自分と村人が重なって見えた。


しかし、へこんでいたはずの村人だったが、



「さあ!あなた様も行きますぞ!」

「いざ!クロウリー男爵の城へ!」

『…へι?』



と、

さらに熱を増していた。



「変態と言われてもくじけない!皆でいれば怖くない!
うおおおー――!!」




呆然とその村人達のテンションの高さを眺めていた三人であった。




三人と複数の村人の行き先は、深い森へと入っていった。


リナリーへの連絡をし終え、村人に連れられた三人は城へと向かう。


アレンとラビは未だに縛られたまま。


後ろでは二人を操るためのロープを村長がが握っている。


玲子は唯一その呪縛を受けなかった。


…どうやら玲子の「変態」発言が相当堪えているようだ。



暫く歩き続けて行くと、急にロープを引かれ立ち止まらせられてしまった二人。



『…着いた、ね』



悪趣味な門が前に佇み、それを見上げる三人。


この先にクロウリーの城がある。


村長の話を聞いている間にも、何かの悲鳴が聞こえて止まない。



「さぁ前へ!」
「「うっす…」」



軋む音を立てながら重たい門はゆっくりと開いていく。


門をくぐり、庭に入ると不気味な像が立ち並んであった。


人の形、獣の形、様々な形が並んでいる。


城の主の趣味の悪さが伝わってくる。


流石にこれはないだろうと思わず引いてしまった。



「無茶苦茶な趣味してんなーιってあれ?アレンお前なんでもう手袋外してんの?」



アレンはイノセンスが発動しやすいようにと、既に手袋を外していた。



「まさか怖いの?」

「まさか。そういうラビこそ右手がずっと武器をつかえてますけど?」



青ざめながらアレンは返した。



「お、俺は怖くないさーιホラ!アレンも玲子を見習えよ」



ラビは右を歩く玲子を手本にするようアレンに言った。


玲子は何も構えておらず、黙々と道を歩いていた。




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