一等星でも三等星でも
□直感
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あの告白事件から1ヶ月。ラインを交換してスタンプの話からどんどん輪を広げ、定期的なやり取りを行っていた。そんな中、先週の部活の帰り道。目に映ったのは青城バレー部のジャージを着た男子と肩を並べて歩く彼女の姿。俺は3年生全員と一緒に帰っていたので、あの男子はおそらく後輩だろう。顔はよく見えなかったが、身長、髪型、歩き方でなんとなく分かった。彼らは電車で通学しているらしく、俺達とは違う方向へむかっていった。
「いーのかよ、ほっといて」
彼らに注目していたことに目敏く気付いた幼馴染み
「…だって、付き合ってるわけじゃないんだよ」
そこまで言って気付いた
“付き合ってるわけじゃない”
ということは、彼女には恋人や想い人がいてもおかしくない。
あくまで、オトモダチ
あんな大事件にしておいて友達というのも変な話だが
つまり、彼女が誰と帰ろうと自分がとやかく言う権利はない
隣から溜息が聞こえて
「お前、ホントめんどくせーな」
「えっ!いきなりヒドイ!」
「お前も帰り誘えばいいじゃねえか。月曜は部活ないだろ」
「いや…でも」
「あの女子だって、もしカレシができたらお前にも報告するだろ。フツーは」
確かにそうだ。と納得してしまう
「…誘ってみる」
「おう」
つぎの日の土曜日。部活の際にそれとなく目星をつけた後輩に鎌を掛けたが、頭のいいその後輩はすぐに見抜き、いつも通り表情の乏しい顔で
「付き合ってないですよ」
と、一蹴された
「…で、連絡したのかよ」
「いや…まだです」
「はあ?」
週明けの月曜日。1日練習の予定だった日曜日が半日になったので、代わりに月曜日に朝練がはいった。眠気を抱えながらも気合いで乗り切り、比較的広めの部室で制服に着替える
「今日誘うんだろ?」
「…うん。」
「じゃあ、連絡しろ。今すぐ」
「い、今!?」
「今だ。」
はっきり言い切られて鋭い目で睨まれると逆らえない妙な威圧感を放つからどうしようもない
ここで、岩ちゃんには関係ないなんていったら、理不尽な鉄拳が飛んでくるだろう
諦めて携帯を取り出そうと鞄に手を突っ込む
が、
「…ない」
「あ?」
「スマホ、家に忘れた!?」
鞄をひっくり返して探すものの見つかる気配はない。
残念のような、少しホッとしたような気分。
「…じゃあ」
いきなり割り込んだ声に驚いて振り向く。いつのまにか部室は俺達以外ほとんど出て行ってしまって静まり返っていた。
「これ、おれの教室まで届けに来て下さい」
「ちょっ、国見ちゃん?」
反対側のロッカーを使っている1年の国見の手には英単語帳が握られてる
「今日の午後英単語テストあるので、昼休み終わるまでにはお願いします」
「おい、国見…」
隣にいた同じく1年の金田一は困った顔をして国見を遠慮がちに制するが、国見はそれを軽く流して
「吉田は昼休みはだいたい廊下で友達と喋ってるのでコレ俺に渡すように言って、ついでに帰り誘って下さい。大丈夫ですよ、オトモダチなら。」
そう言って、そばにあったパイプ椅子に英単語帳を置き金田一を急かしてさっさと出ていってしまった
「…お前、国見にあの女子とは友達だって話したのか?」
そう聞いてきたのは、俺とあの子が友達であると知っているのはごく一部の信頼出来る奴だけだから
「まあ、おとといね…鎌を掛けた時に口滑らして…」
「アホだな」
「ほんっとひどいよね!!」
「事実だろ。」
当然のようにと言って 国見がおいていった英単語帳を手に取ると俺に押し付けた
「昼休み、絶対行けよ」
その言葉に小さく頷き、単語帳を受け取るしか選択肢はなかった。