一等星でも三等星でも
□愛想
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「で、ライン交換して友達からやってるの?」
「まあ、うん」
「あんたにしては、珍しいね」
そう言いながら中学からの友達、美恵は弁当の卵焼きを口に放り込む。
その言葉に、そうかなと返しスマホを取り出す。ラインの友達の欄に表示されている新しい名前。
『及川徹』
友達になることを承諾し、ラインを交換した直後、及川さんは廊下で一緒にいたバレー部らしき人に殴られ連行されていった。
「…友達って何から始めればいいんだろう。」
「悩むなら断ればよかったじゃない。」
「…最初は断るつもりだった。けど、まっすぐ見つめられて、助けてくれとでも言いたいような顔をしてて…」
「…何から助けるの?」
「…さぁ、でも先輩で友達っていうのも、おかしいよね」
「たしかにね」
ぼーっと真っさらなトーク画面を眺めていると、突然現れた白い吹き出し。
「こんにちは」
「及川徹です」
軽い自己紹介から始まって先程の謝罪が続く。
「えっ、どうしよう」
「あんたも同じように返しなって」
急いで指を動かし、緑の吹き出しを増産。次々とつく既読の文字。打ち終わると及川さんの反応を待った。
「ありがとう。改めてヨロシクね、あんまり気とか使わなくていいから」
「こちらこそよろしくお願いします。」
返すと、スタンプがひとつ。こちらの既読無視で終わるのは良くないと思い、スタンプで返す。これで終わりかと思いきや直ぐについた既読に続いてまたスタンプが浮かぶ。それに返すとまたスタンプ。 返しても返しても終わらない。なんというか
「…ふふっ」
「うわ、どうしたの」
「いやさ、及川さんのスタンプ面白いなって」
画面に並ぶユーモア溢れるウサギやペンギンのスタンプ。
「なんだかんだで上手くやれそうじゃないの?」
「まだ分かんないよ」
「…ふっ」
「…うわ、及川キモ」
「携帯見てニヤニヤしてる」
「やめろ、キモ川」
「みんなひどい!!!」
「なに笑ってたんだよ」
手元を覗かれそうになり、慌てて隠す。
画面に並んだ彼女のスタンプは予想外にギャグものが多かった。
「かわいーなって思って」
自分の口をついた言葉も予想外