一等星でも三等星でも

□警告
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今何が起こっているのか、状況を整理する暇もない。ただ勢いで告白してしまった1年の女の子の腕を掴んでひたすら全力疾走。後ろからはチームメイトが自分を呼ぶ声と、女子の悲鳴が響いている。誰にも追いかけられていないのを確認して、渡り廊下から飛び出し、部室棟の裏まで一気に駆け抜けた。足を止めた時に思い出し後ろを振り返ると、女子にはきつかったのか案の定座り込んでしまっている女の子。

そもそも、なぜ自分があのような場所で名前も知らない今日初めてちゃんと顔を見た女の子に告白したのか。自分に興味なさげな顔か、はたまた友達に見せていた笑顔か。なにか惹かれるものがあったのだろうか。悶々と考えていると、女の子は立ち上がってこちらに顔を向けた。未だに整わない呼吸に、苦しそうに歪んだ顔に、に申し訳なさがつのった。取り敢えず謝らなくては、そう思って口を開くよりも早く淡々とした声がそれを遮った。

「何かの間違いだったんですよね?」

じっと見上げるその目は落ち着いていて

「…何が?」
「さっきの告白です。オイカワさんは別に私に興味が有る訳ではないんですよね?」

責め立てることもなく、悲しみの色も喜びの色も見せずに淡々と。なんの反応も返せずにいると、彼女はそれを肯定と取ったのか

「周りの人にはオイカワさんから説明しておいて下さい。…私よりは説得力あるだろうし。それじゃあ、失礼します」

言うだけ言って、軽く頭を下げると踵を返す。その後ろ姿に為すすべもなく立ち尽くしていると、頭に響いた声

ヒキトメナクテハ

何故か分からない。今日の俺は少し変なのかもしれない。去っていくその背中への距離を3歩で縮め、さっきのように腕を掴む。今度は彼女が振り返るまでちゃんと待った。

自分を見つめ返すその目に心臓がどうしようもなく軋んだ。軋む理由が自分でも分からなくて、それがさらにギシギシと心臓を締め付け破壊へと誘われている気がした。

「…有るよ。」
「…?」
「君に興味がある。」
「…っ」

やめろ、こんなことを言ってはいけない。きっと傷つく。彼女も俺も。

「…友達からじゃ駄目?」

頼むから断ってくれ。いや、彼女ならきっと断る

「……いいですよ。」
「…え…」
「…だから、友達からならいいですよ」

俺を見上げる目は相変わらず。

「…うん。よろしく」

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