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□大好きなところ
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異性の好きな部分は何処か、と聞かれたら迷わず手と答えるだろう。手の中のでも、大きくて少しゴツゴツしていて骨ばっている手が好き。細かいとか言われそうだけど、私の友達には、異性のへそだとか、すね毛がフェチの子もいるので全然軽いものだと思う。

そして、今まさに目の前で友人から貰ったと言うシュークリームを頬張っている私の彼氏、松川一静の手がドストライクなのだ。別に手が好きだから付き合ったわけではない。付き合いはじめて、彼の手の魅力に気づいた。

100年に一度の逸材かもしれない。ずっと見ていても飽きないとかなんとか思いながら視線を手から松川の顔に移すとじっとこちらを見つめていた。

「…何?」
「結衣ちゃんってば、そんなに見つめないでよ!エッチー!」

眉をぴくりとも動かさずに気持ちの悪い裏声を出してきた。

「…うわ、きもっ」
「ひでーな。いくら俺でも傷付くよ」

そうは言っているものの全く傷ついているようには見えない。むしろニヤニヤと笑みを浮かべて楽しんでいるようだ。

「ほんとに好きなんだな。俺の手」

そう言いながら長い指についたクリームを舌ですくい

「俺と、俺の手とどっちが好き?」

などとぶっ飛んだ質問をしてきた。

「そこ比べるの?ていうか、聞くまでもなくない?」

目を見つめながら返すと、少し驚いたように目を見開き、次いでニヤッと笑ってぐしゃぐしゃと頭を撫でてきた。

「ちょっと!その手、さっきクリーム舐めた手でしょ?汚い!」
「えー 俺の手好きなんじゃないの?」
「それとこれとは別!」

ふーんと呟いて頭から手を離してまたシュークリームを食べ始めた。

「……松川」
「ん?」
「松川の方が好きだよ。ていうか、松川の手も松川なんだから選ぶ必要ないでしょ」
「………」
「松川?」
「……うん」
「もしかして照れてる?」
「…んなわけねぇだろ」

しかし、反論する声には勢いがない

「可愛いとこあるじゃん」
「…うるせーよ」

そう言ってまた私の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。私の大好きな松川の大好きな大きな手で。

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