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□日曜日の一発逆転
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久しぶりの休日。家でゆっくりするのも悪くはないけれど、たまには女子らしく服でも買いに行って見ようと息巻いたのはいいけれど、休日のデパートなんて行く物じゃない。フロアいっぱいに人が溢れかえっていて、買い物なんてする気にもなれず、デパートを出た。

そう言えばもうすぐ友達の誕生日だったなと思い出し、近くの雑貨屋に足を運んだ。ラッピングに時間がかかると言われたので、近くで暇つぶし出来る場所を探すために、その辺の壁に寄りかかってスマホを取り出した。

が、、

「ねぇ、君ひとり?俺らと遊ばない?」

チャラチャラとした声に思わず顔をあげてしまうと、薄ら笑いをうかべた二人組が目に入る。ナンパなんてされた事無くて対処に困ってしまう。ホントに今日は散々だ。

「……結構です」

口から出た声は思ったよりも全然小さくて弱々しいものだった。

「いいじゃん。カラオケとかどう?俺らがおごるし!」

そう言ってなれなれしく肩に手を伸ばしてきた。思わず避けようとしたが、後ろの壁に阻まれる。……けれどその手が私の肩に触れることはなかった。

「オニーサン達なにしてんの?」

顔を上げると、相変わらずのトサカヘッドに“食えない笑み”を浮かべたクラスメートで、彼氏の黒尾が、ナンパさんの腕を掴んでいる。

「…わりーな結衣、待たせちまって」

展開が早すぎて着いていけない。なんとか首を横に振ると、黒尾はニッと笑ってナンパさん達に向き直る。表情こそ笑っているものの、目は全く笑ってない。本能で危険を察知したのか、ナンパさんは黒尾の手を振りほどき何かを言い合いながらどこかへ行ってしまった。

「…大丈夫か?」
「うん、ありがと…助かった」

どうやらバレー部も今日は休みだったみたいで、何処かに行くのなら俺も誘ってくれれば良かったのにとぼやかれた。
が、私がこれから適当に時間を潰す予定だと言うと、少し考える素振りを見せてそして悪戯っぽく笑って右手を差し出した

「では、俺とデートでもしませんか、お姫サマ?」

繋いだ手は温かく心地よい。散々な休日だと思っていたが、一発逆転。いい休日になりそうだな

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