王者の日常

□逃げ道ふさげ
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ノロノロと学校に足を進めていると、意外な人物と出会った。

「相模先輩。」
「あっ、賢ちゃん!おはよー」
「おはようございます。あの、いい加減その呼び方どうにかならないんですか?」
「んー、どうにもならない」
「はぁ…」

賢ちゃん、こと白布賢二郎君は、どうも私の付けたあだ名が気に入らないらしい。可愛いと思ったのに。

「賢二郎って長いじゃん」
「じゃあせめて、賢君にして下さい」
「えー、やだ」
「何でですか?」
「可愛くないもん」
「俺に可愛さを求めるのは止めて下さい」
「努力するよ」
「お願いします」

その後、歩きながら賢ちゃんに聞いた話によると、昨日部室で牛島にナチュラルに「賢ちゃん」と呼ばれたらしい。それは私が普段その呼び方を気に入って、頻繁に呼んでいるから移ってしまったとのことだったけれど、当然ながら大騒ぎになり、先輩や同級生からは囃し立てられ、散々な目に遭ったそうだった。

「てな訳で、マジでお願いします」
「……」
「笑いすぎです」
「だって…あの牛島が…あの顔で賢ちゃんって……もー無理」

私がかなりツボに入ってしまい、まともに返事ができなかったので、この案件は先延ばしになってしまったのである。

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