王者の日常
□裏の表
1ページ/1ページ
カランカランカラン
大きく響いたのは、長机を挟んで立っている男の人の手に握られた小さな鐘。
「おめでとうございます!商品券千円分です!」
おおっと歓声があがる。
「やったー!!」
受け取った商品券を嬉しそうに眺めるのは我らのマネージャーの遥華ちゃん。
今日の部活後に彼女にアイスを買ってもらうことになり他の部員数名と共に近くのスーパーマーケットに向かっている途中の出来事。スーパーの前で抽選会が催されていて、たまたま参加券を持っていた彼女が引いてみたところ、見事大当たり。嬉しそうでなによりだ。
けれど、遥華ちゃんは、しばらくその商品券を見詰めた後、こちらに向かって来て、商品券を俺に差し出した。
「これ、覚にあげる」
「へ!!?」
まさかの提案に変な声が出た。他の部員たちも驚いている。
「えっ、俺が貰っちゃっていいの?」
「いいよ!これでアイスいっぱい買ってね」
「マジで!?」
「マジで」
俺の手に商品券を握らせた遥華ちゃんは満足そうに笑って、さっさとスーパーの中に入って行ってしまった。その背中を追いかけて入ろうとした時、何故か若利君に哀れみの目で見つめられた。
理由を聞こうと思ったけど、俺が何か言う前に、さっさと歩いて行ってしまった。
まあ、いっか。取り敢えずアイスをいっぱい食べることにしよう!
え?まだ四月?寒いって?見くびっちゃダメダヨー!大好きなアイスならいくらでも!