王者の日常

□笑顔は微妙
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「……ヤバイ……俺…今日死ぬ」
「覚、邪魔。どいて」
「遥華ちゃん、何で俺だけにそんな辛辣なの!?」
「モップかけられないからどいてよ」
「無視!」

ロードワーク2倍は流石にきつかったのか、覚は床にカエルのように転がってしまっている。私も早く帰りたいので、モップで容赦なく突っつくと悲鳴を上げて牛島の方へ転がっていった。

「若利くん助けて!殺される!」
「そうか」
「冷たい!」

残念ながら牛島は、私が絡んだ事に関わりたくないらしく軽く流す。このままじゃ片付けは全く終わらない。それに、こうなった責任の一端は私にもあるわけだし、放っておくのもそろそろ可哀想になってきた。

モップを引きずって牛島の足元でゴロゴロ暴れていた覚のそばに座り込み、顔をのぞき込む。途端彼は、おとなしくなってジッと私を見返してきた。

「覚」
「はい。」
「帰りにチョコのアイス奢ってあげるから片付け手伝って」
「うん!!!」

コンマ数秒で大きく頷き、勢いよく立ち上がると私の持っていたモップをかっさらって、目にも留まらぬ勢いで片付けを始めた。

「牛島もたべる?」
「俺はいい」
「何で?」
「お前に借りを作りたくない。」
「大丈夫だよ。私、財布家に忘れたから結局は覚が払う」
「お前は…」

牛島は呆れたように溜息を零し、気の毒そうに駆け回る覚を見やった。

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