小手毬と青い春
□つながる想い
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迎えた記録会当日。
たくさんの中学校から来た生徒や、観客で会場の席はうまっていた。
「いよいよ記録会だ。今日の記録が1年間の指針になるからな。気合い入れろよ!」
輪になった部員に夏也先輩が快活な声で告げる。
「岩中ー、ファイッ!」
「オー!」
いよいよ始まるんだ。
そう思うと、私はマネージャーなのに何だかドキドキしていた。
「蒼ー!」
「司、爽香!来てくれたのか」
ベンチから聞こえた、よく通る明るい声。
Tシャツにハーフパンツといったボーイッシュな格好をした司と、シンプルなワンピースを着た爽香が立っていた。
「いやー、意外と知り合いいるもんだね」
「ほら」と司が指した方を見ると、貴澄と望月君が来ていた。
今日は渚と、透兄や紺も来るって言ってたな。
種目が続き、メドレーリレーが近づく。
そのとき、4人が夏也先輩と尚先輩のところに並んだ。
「もうすぐリレーだな」
「どう、いけそう?」
3人とも肯定的な返事をする。
黙っていたハルが話し出す。
「……小学生のとき泳いだリレーは、俺や真琴にとって特別すぎて。だから俺は、もう他のメンバーでリレーを泳ぐつもりは無かったんです。
……でも今は、それが少し変わった。俺は今、このメンバーでリレーを泳ぎたい」
ハルの言葉を聞いて、みんなそれぞれ嬉しそうな顔をする。
私も思わず、笑みを浮かべた。
「頑張っておいで」
「絶対勝ってこいよ!」
そう声をかける尚先輩も夏也先輩も、どこか嬉しそうで。
「蒼」
尚先輩が私に声をかけるのと、私がベンチから小走りで下りるのは、ほとんど同時だった。
側で、同じ目線で見てきたからか。
伝えたいことは1つだった。
「……頑張れ!」
はっきり声に出した、みんなへの思い。
うなずくハル。
拳を高くあげる旭。
嬉しそうに笑う真琴。
頬を染める郁弥。
「おっしゃあー行くぜー!」
「はしゃぐとコケるよバカ旭」
そう言いながら召集場所に向かう背中を見送る中。
尚先輩の声が聞こえた。
「……この瞬間があるから、教育係はやめられないんだ」
「……それもいいけど、さっさと選手に戻ってこいよ。俺が待ちくたびれる」
「そのうちね」
そっと聞かなかったふりをして、司たちのところに戻る。
「よく言ったじゃん」
「……よかったね」
司がニヤニヤしながら肘でつっついてきて、爽香はほわりと笑っていた。