小手毬と青い春


□さみしさの音色
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昨日遅くに帰った上にびしょぬれで、心配した透兄にちょっと怒られた。
おかげで少し眠い。

放課後のチャイムが鳴る。
それと同時に。

「みんな!部活に行こう!」

めずらしく、真琴が教室まで来た。
両手をぐーにして意気込んだ表情で。

「真琴?」
「どうしたー?お前が来るなんてめずらしいなー」
「張り切ってるな」

思わず目を丸くする。
旭やハルも同じことを思ったのか、怪訝そうにしていた。

「あ〜、ちょっとね」
「ふーん、まあいいや。おーい郁弥、部活行くぞー」

照れくさそうに頭に手をやる真琴に答えた後、旭が前の席に座ったままの郁弥を呼んだ。

だけど。

「……行かない」

振り返らずに返ってきた声に息をのんだ。

「バカいうなよ!リレーの練習しようぜ、リベンジすんだよ!佐野中に!」

拳を握って反論する旭に、背中を向けたまま郁弥は淡々と続けた。

「……勝手にすれば。僕はもう水泳部やめる」

「なん……」
「何言ってんだよお前!ふざけてんじゃねえぞ!」

私の声が消えるくらい。
声を荒らげた旭が郁弥のシャツの胸ぐらを掴んだ。

「そんな冗談笑えねえよ!おい!」
「うるさい!!」

その手を思い切り振り払い、郁弥が今まで聞いたことがないほど大きい声を出した。

「もうやめる!!」

「おい!待て郁弥!」
「ちょっと2人とも!ってアオ!?」

教室を飛び出す郁弥を追いかける旭。
真琴の声を背中に聞きながら、私も教室を駆け出していた。
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