天然声優は愛され系

□侑陽事変
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「寝る前に食べてね」

と、大鳴さんに渡されたアメを食べ、歯磨きをして寝た次の日のことだった。


「……あれ?」

目が覚めてすぐに感じた違和感。
いつもより部屋が大きい?
そして自分のパジャマもやけにぶかぶかだった。

「そうか、私が縮んだのか」

納得してぽんと手を打つ。

「ってどうしよう!今日はアニメの収録あるのにーー!」

わたわたとテーブルの上のスマホを手に取り、私はマネージャーの涼ちゃんに電話をかけた。

「もしもし涼ちゃん?!」
『おはよう、ゆうちゃん。どうしたの朝早くから』
「何か大鳴さんからもらったアメ食べたら縮んでたの……。どうしよう……」
『あー……。じゃあ9時にそっちのマンションまで迎えに行くね。事情は後で話すから』
「へ?」

何かを察したような涼ちゃんの言葉が気になり問いかけようとした時には、電話は切れていた。

ところで今の私の背丈はどれぐらいなんだ。

よいしょと踏み台を運び、洗面所の鏡に顔を映す。
するとそこには、小学1年生くらいの女の子がいた。

「oh......」

思わず異国風の感嘆詞が出たのは言うまでもない。


どうしようかなぁ。
今の体に合う服ないし……。

しょうがないので、もはやワンピース状態になってるパジャマの上を着たまま下に降りて行った。

「え、どこの子?!」
「あ、神谷さんおはよーございます!」


***

7時頃。
2階から5、6歳くらいの女の子が来たのには動転した。
しかも普通に挨拶してくるし。
そしてゆうちゃんだし。

何だろう。
階段の手すりに捕まって、一段一段ゆっくり降りてきたの、幼さ全開ですごく可愛かったんだけど。

てか元々小柄だったけどさらにちっちゃい!
そしてクリーム色の地の猫柄パジャマとか可愛すぎるんだけど!
ゆうちゃんのパジャマ姿とかめちゃくちゃレアだ……。

早起きは三文の得って言うけど本当だね。

「?」

こてんと首をかしげてくるのがまたかわいい。
ていうか今のゆうちゃん他の野郎たちに見せたくない……。

「マネージャーに連絡はした?」
「9時に来るって連絡来ました!」
「じゃあそれまで部屋に……」
「あ、小野Dさーん!おはよーございまーす!」

さっそく見せたくない野郎その1と出くわしてしまった。

「ゆうちゃん ちっちゃあーー!!」
「わあ〜っ!」
「小野くんゆうちゃん下ろして今すぐ」
「あっはい」

高い高いした挙句回りだしたのですぐさま止めた。

「小野Dさんもっかい!」
「だめ」
「あう」

小野くんに両手を上げてせがむゆうちゃんと、再開しそうな小野くんにストップをかけると残念そうな目でうったえられた。

***

神谷さんに「着替えてきなさい」と言われ、とりあえずTシャツをワンピースみたいに着る。
小さくなったからどうなるかと思ったけど、案外日常はいつも通りだった。

いつもと違うことと言えば。

「侑陽ー、侑陽どこ行ったー?」
「ここです!ここですよ達央さん!」

……いつもよりいじってくる人がいること。

存在を示そうとぴょんぴょん飛んでいたら、力尽きて床にへたりこんだ。

「本当にちっちゃいね〜」
「おゎ」

後ろから脇の下に手を入れられて、ひょいと抱えあげられる。

「あ、平川さんずるいですー」
「お母さん役の特権でーす」

梶さんと平川さんの会話が頭の上で聞こえる。
男性らしい大きな手に頭を優しく撫でられ、気持ちがほわんとして目を細めた。

「♪」
「猫か君は」

笑われました。
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