人は縁でつながるものらしい

□サーヴァンプクエスト!
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大魔王ツバキに支配され、天気雨に包まれた王国。
ある日その国の姫がさらわれてしまう。
国を正すため、姫を奪還するため、ついに勇者マヒルとその仲間たちが立ち上がる────。

***

「真昼〜、クロ〜、早く〜、へるぷ〜」
「ちょっと〜、窓の外を見ながら大声でつぶやかないでくれる?」

城は高い塔のような形のため、清々しいほどに景色が見渡せる。
窓枠にもたれ、私はひたすら一行を待っていた。

「いくら呼んでも勇者たちはまだ来ないよ。だからほら、僕の隣でゆっくりしよ」
「人さらいが図々しいです」

こたつでぬくぬくしているラスボス役の椿さんの誘いを、景色から目を離さずにすっぱり断る。

「ていうか何で私が姫役なんですか。女格闘家になって真昼たちと一緒に魔王をしばきに行く流れを期待してたんですけど」
「さくっと怖いこと言わないでよ」

わざとらしく自分の体をかき抱く椿さんを横目に見ながら、ドレスの裾をいじりつつ続ける。
姫なんて柄じゃない。

「ドレス着てヘッドドレスつけて、魔王にさらわれるのを待つ姫って……」
「それがRPGのお決まりでしょ。やっぱりヒロインがさらわれないと盛り上がらないからね〜」
「既に私の気分が盛り下がってるんですが。……向き合えねー」
「怠惰の兄さんの真似はやめて」

窓枠に顎を乗せてだるんとした状態になると、ちょっと不機嫌そうな声が文句を言ってきた。

「こたつあったかいよ〜。ダッツもあるよ〜」
「……何味ですか」
「新作の杏仁味と、抹茶とイチゴ」
「イチゴだけください」

勇者たちは遅れてやってくるのがお決まりのようだ。


 

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