かにもかくにも撮るぜベイベ
□たまにはあるさ、こんな日も。
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家族を含む異性とここまでくっついたことは無くて、初めてのことに動揺する。
少しずつ、心臓の鼓動が早くなっていく。
「……なぁ、お前、何でそんな優しいんだよ」
「……へ?」
「押しかけても、普通に家入れてくれるし。風呂と服貸してくれるし。飯くれるし。……こんなことしても、あんま文句言わねーで受け入れてくれるし」
ぎゅう、と抱きしめる腕に力がこもる。
帝統が私の肩に顔を埋める。
帝統の息が当たった場所が、あつい。
「……慣れてんのかよ」
「慣れてるというより、放っておけないというか……。困ってたら手助けしたくなるというか?流石に家に泊めるのは、帝統が初めてだけどさ」
「……ふーん」
「……何かあった?」
「……おう。いろいろ」
「そっか」
深く踏み込んでいいものか、しばし逡巡する。
とりあえずお腹に回されてる帝統の腕を、ぽんぽんと優しく叩いてみる。
「……お前、あったけーな」
「私のこと湯たんぽか何かだと思ってない?」
「思ってねーよ。あといい匂いすんな」
「帝統も、私と同じシャンプーとボディーソープ使ったんだけどね」
「それに、俺より柔らけぇ」
「そりゃ男と女じゃ体つき違うからね」
一応成人済みの男女が、一緒のベッドで寝てるときにする会話じゃないなと思いながら、帝統とどうでもいい話をする。
帝統がすりすりとおでこを擦り寄せてきたから、帝統の髪が私の首筋にちくちくふれて、くすぐったい。
今日は彼にとって、人肌恋しい気分の日なのだろうか。
こっちは抱き枕になった気分だけど。
「……今日、ありがとな。棗」
低い声が耳元で響いた。
帝統の足が私の足に絡んできて、私は顔が熱くなっていくのを感じた。
私、今夜ちゃんと寝られるのか、……。
チュンチュン小鳥がさえずる声が外から聞こえる。
一睡もできないことを覚悟してたけど、意外と私は図太いらしい。
目を開けてすぐに視界に広がった、ヨダレをちょっと垂らしてる帝統の寝顔を見て、私はそう悟った。
大当たりした夢でも見てるのか、帝統は大層幸せそうに「すりーせぶん……」と寝言を呟いた。
END