かにもかくにも撮るぜベイベ
□宣伝って大事
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次はシンジュク代表のチームの撮影。
別チーム同士で喧嘩が起きないように配慮された順番らしい。
リーダーの神宮寺先生、背がとてつもなく高い。見上げると首がちょっと辛い。
人間版東京タワー?いやスカイツリーの方が正しいか?
「月見里 棗といいます。今日はよろしくお願いします!」
「……眩しい……」
「えっ、大丈夫ですか?照明弱めますか?」
「室内の明るさが原因ではないですよ。安心してください」
名刺セットで自己紹介してくれた3人に対して、私も名刺を出しながら挨拶をする。
そのとき片手で目を覆ってしまった観音坂さんが心配で声をかけると、神宮寺先生が穏やかな表情と声で答えてくれた。
照明じゃないなら何が原因なんだ?まだカメラのフラッシュ見てないよね?
「マリーゴールドのように明るい子猫ちゃんだね。君に写真を撮ってもらえるなんて、僕は幸せものだ。よろしくね」
ぐるぐる考えていると、伊弉冉さんが私の手を恭しく取り、指先にキスを落とす。
突然のことに、私は目を見開いた。
あなたは絵本や漫画に出てくる王子様ですか??
呼吸をするように女性を虜にするような台詞を口にしたぞ?ホストか?そうだこの人ホストだった。
ていうか笑顔がキラッキラだな!真夜中にきらめく夜空とシャンパンタワーを見つけたような気分だよ!
「お、お任せ下さい!ばっちり撮影してみせます!あと眩しいです!」
「恐らく先程の独歩くんと同じ状態になっているね。それにしても一二三くん、君スーツを着ると本当に別人だね……」
「目を閉じて赤くなった顔もチャーミングだね、子猫ちゃん」
「お、おい一二三!初対面なのにそんなに近いと失礼だろ!すみませんすみません!」
様子を見るために薄く目を開けたとき、さっきより近くなった伊弉冉さんのお顔が遠ざかっていった。
慌てた様子の観音坂さんが伊弉冉さんを羽交い締めにしてたから、引き剥がしてくれたらしい。
気を取り直して、3人の撮影を始めることにした。
「私は、この立ち姿で良いのかな?」
「はい!年長者の揺るぎなさを感じる1枚にしたいので!」
さりげなく送られる風のおかげで、先生の艶やかな長髪と糊のきいた白衣が、上手い具合になびいていた。
「伊弉冉さん、体勢辛かったら踏み台使ってくださいね」
「そうさせてもらうよ、子猫ちゃん」
伊弉冉さんにはスタジオにあった黄色いバラを持ってもらい、華やかさが伝わりやすそうな1枚に仕上げた。
「観音坂さん、首に両手を当てて、舌を少し出してもらえますか?」
「え、と……こ、こうですか?」
「良い感じです!そのままキープで!」
観音坂さんには、目が離せなくなるような危うさを感じるポーズを取ってもらった。
物憂げな表情がとても素敵だ。