小手毬と青い春
□つながる想い
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いよいよメドレーリレーが始まる。
司たちと待つ中、岩鳶中のジャージを見つけた私はメガホンを握る手に力を込めた。
アナウンスが流れ、笛の音を合図に真琴が水に入る。
「最初が背泳ぎだよね?」
「うん」
真琴から目を離せないまま、司の質問に返す。
笛が鳴り、みんな一斉に飛び出す。
真琴のスタートは上々。
一生懸命に応援する。
「すごい……!もう1位……!?」
「ファイトー!」
隣で爽香が声を出す。
司も持ち前の声を張った。
誰も寄せつけない、海をダイナミックに泳ぐシャチみたいな泳ぎ。
去年のリレーと変わらない、真琴の本来の泳ぎ。
次はブレの郁弥に繋がる。
真琴の手がプールの壁にふれ、郁弥が飛び出す。
リアクションタイムは0────。
最初に見たときより上手くなっている気がした。
きっと郁弥が、変われたからじゃないのかな。
迷いもためらいもない、まっすぐな泳ぎ。
さらに周りと差をつけ、旭に繋げる。
息の合った引き継ぎに息を飲んだ。
「……スタート、上手になってる」
「え!見ただけで分かんの?!」
驚く司にこくりとうなずく。
豪快で力強い泳ぎ。
旭の性質をそのまま表したみたいな泳ぎで、加速していく。
最後の泳者はハルだ。
壁にタッチし、旭が上を仰ぎ見る。
水しぶきの先へハルが飛び込む。
伸びやかな、イルカみたいな泳ぎ。
エネルギーを昇華させて、1条の光のようになる泳ぎ。
司も爽香も言葉を忘れて見とれていた。
そして堂々の1位でゴールするハル。
あちこちで弾けるような歓声が沸き立った。
「すごい!1位だよ!蒼!」
感極まった声で司が私の両手を握る。
爽香も声にならずに目を輝かせていた。
4人の方を見ると、ハルが3人にもみくちゃにされていた。
喜びではしゃぐその姿は、まるで去年のみんなを見ているようで。
────最高の仲間と最高の瞬間は、一つとは限らない。
そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
私は嬉しさではち切れそうな胸を押さえ、私は2人と笑いあった。