戦国無謀

□愛する人よどこへ行く
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みきは藤孝から、話を受けた後、
「この事は絶対に口外するな。」と口止めされ、また中に戻った。
境内が慟哭に包まれる中、
二人は中央に安置された亡骸の方へと駆け寄った。
そして二人は亡骸に一礼をし、
他の面々にも一礼すると足早に
邪魔をしてはならん、とばかりに足早に去って行った。
そこにいた者の記録によれば、
藤孝は涙が止まらないみきを介抱し、そして他の面々を必死に勇気づけていたという。

その後、また仲良く早馬で帰ろうとした二人を誰かが呼びかける。
それは此度の主の盟友、黒田官兵衛であった。
官兵衛は喪中だということもあり、その腕には喪章がついていた。
「此度はわざわざお越し頂きかたじけない。」
「こちらこそ此度は愁傷な事やなぁ。やはり悲しみを禁じえんわ。」
「だが貴殿はご存知ですか。家中に毛利家と誼みを通じている者がいるというのを...。」
「そうか。だがお主にとっては火種を潰すにはもってこいの話ではないのかえ?
それにそのような事を喪中に言われてもどうする事も出来ん。
そして俺は信長様には恨みも恩もあるが、毛利には何もない。
ただ、それだけよ。」
「そうでござるか。卿はもう少し頭の良い御仁だと思ったが...。」とこの二人の間でしか分からない会話を繰り広げる。
その後一言二言話した後、
またそれぞれの道に向かった。
官兵衛は二人が去っていく姿を
少し笑みを浮かべながら境内に入った。
(ふん、随分と変わった真似をされる御仁よ。あれで天下を狙わんとは、よく分からないものよ。)
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