戦国無謀

□出陣せよ!
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みきは、朝から浮き足立っていた。
天正四年(1577)十月。
織田信長の家臣だったはずの松永弾正久秀が突如反旗を翻した。
これに対し信長も「興じようぞ。」と何か久秀の裏切りを愉しんでいるかのように、久秀討伐の兵を挙げた。
討伐軍の主な顔触れはまず、巷ではサル、はげねずみ、人たらし、醜男と言われている羽柴秀吉。
次に朝廷から惟任の姓を頂いた明智光秀。
そして当代きっての一流文化人であり織田家で一番怒らせると厄介な男(面倒くさい男)、細川藤孝であった。
三人は出陣前に現代でいう壮行会も兼ねて、藤孝の屋敷で茶会を行っていた。
その準備のためにみきは朝から藤孝にこき使われていたのである。
「あぁもうあのバカ殿め、
人遣い荒いんだから!私のことを何だと思っているの。」
みきが不満を露わにしながら、
野点のセットをしている。
その最中、奥から1人の女性がみきに話しかけてきた。
「まあ、そう言いなさんな。
殿も2人を落ち着かせようと骨を折っておられるのです。」
「麝香様!」とみきは答えた。
話しかけてきたのは藤孝の妻である麝香(じゃこう)である。
「みき殿、そなたには苦労をかけますね。ですが殿もこの戦には特別な思いというのがあるんですよ。でもあの人にその話をすると例え冗談でも、狂ったかのように大暴れなさる。この話は絶対に殿の前ではなさらないように。」と釘を刺した。
みきは不思議がったが気にせず作業を続けた。
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