脱出せよ! 【完】

□終幕
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しかし、体育館を出ようとした所でモンスターに行く手を阻まれた




「チッ!」

「ここで出てくんのかよ!」

「行かせないってか!?」




行く手のみならず、後ろにもモンスター

私達は囲まれてしまった




「時間がない!さっさと終わらせるぞ!!」

「「「『おうっ!』」」」




みんな背中合わせで、次々に発砲していく

至近距離で発砲音が響いて耳が痛い

でも、そんなこと言ってられない!




「相変わらず、しつこいっスね!!」

「しつこい男は嫌われますよ!黄瀬くんみたいにっ!」

「それは言えてるなっ!」

「ち、ちょっと!?黒子っち!青峰っち!!」




言葉はふざけてても、みんなちゃんと確実に弾をモンスターに命中させていく




『黙ってりゃイケメンってことだよ!』

「涼太が黙ってなんていられないでしょ!」

「麻紀っちと奈央っちまで!?みんなして何なんスか!?」




早くモンスターを倒さなければ、と気負いしすぎていた私達には、こんな馬鹿げた話が丁度いい

ちょっと気が抜けて、着々とモンスターを倒していく




「「「これで最後っ!!」」」




最後の1体が消えると、血生臭い匂いを残して静かになった




「けど、まだ12体残ってんのか…」




体育館にモンスターの姿はなくなったが、カウント計には12の文字が表示されていた




「気のせいだといいのですが…」

『うん、イヤな数字だね…』




12:12




私達の残りの数とモンスターの残りの数が同じ

こんな所に3時間近くもいるせいか、どうも最悪な事態ばかりを想像してしまう




「1人1体ずつ殺ればいいってことっスよ!」

「その通りなのだよ。残りの10分弱。早く職員室に行くぞ!」




私達は、今度こそ職員室に向かうために体育館を後にした









「お帰りなさい!」




職員室に着けば、さつきが出迎えてくれた




「じゃあ、これを…」

「T、E、A、M、M、A、T、E」




隠されていた文字を一文字一文字置いていくと、正解を表すかのように、玉が光り、台座ごとスッと消えていった




「これで、隠された文字はクリアだな」

「でも、どーするんスか!?」

「ここにいたら、モンスターは倒せませんしね…」




職員室は安息地帯

ここにいる限り、モンスターを倒すことは出来ない

残りのモンスターを探し、倒さなければならない

残り5分ほどで…




「じゃあ!早く探して、倒してクリアさせないと!」




《待って…》




みんなモンスターを探しに職員室を出ようとすると、それをキャロルが止めた




「何なのだよ!?」

「早く行かないと…」

《話を…聞いて…》




早く行かないとクリア出来ない

でも、キャロルの話を聞かなければならないらしい




《あなた達が…頑張ってくれている間…神様達も…あなた達を…救済するために…働いて…下さってたの…》

『神様達が!?』

《そのおかげで…少し前から…神様達と…コンタクトが…取れるように…なったわ…》

「で!?神様は何て!?」

《マスターを…拘束したと…》

「じゃあ、モンスターを全部倒さなくてもいいんスね!?」




焦りなのか何なのか、みんな食い気味にキャロルの話を聞いていた




《そうでもないの…》

「どーゆーことっスか!?」

《マスターを…拘束した後…神様達は…この世界を…破壊しようと…試行錯誤…してくれてたの…。でも…出来ないって…さっき…》

「何故なのだよ」

《そろそろ…他の神様達が…来るであろうと…予測した…マスターは…設定を…変えたらしいの…》

「設定を?」

『何!?その設定って!』

《この先…モンスターは…現れない…と…》

「「「『っ!?』」」」




まさかの出来事に、みんな言葉を失った




「つまり、それって…」

「クリア出来ないじゃん」




当初の設定では、3時間と言う限られた時間の中で私達は1人でも多く残り、隠された文字を見つけ、100体のモンスターを倒すと言うことだった

そうすれば、ゲームをクリアし、私達はいつもの生活に戻れる手筈となっていた

だから、私達は隠された文字を全て見つけ出し、88体、正確には118体倒し、残り12体までにたどり着いた

しかし、この先モンスターは現れないとキャロルから告げられ、目標の100体を倒せなくなってしまった




「オレ達は…ここで死ぬんスか…?」




100体倒せないのだから、つまりは、そう言う事なんだろう

みんな分かってはいても、信じたくなくて、認めたくなくて、言葉を発しなかった




《一つだけ…手が…あると…神様が…》

『何っ!?』




もうダメだと、諦めたかけている時に、キャロルから提案があった

これには、みんな食いつかずにいられない




《でも…一か…八かの…大勝負…よ…?》

「この際、何でもいい!」

《残りの…モンスターの…数は…12体…。そして…あなた達の…数も…12人…》

「なるほど…」

「えっ!?どーゆーことっスか!?」

『私達が、私達を殺すのよ…時間内にね』

《その通り…。神様達は…今も…解明に…急いで…くれている…けど…まだ…その…結論には…達していない…。だけど…あなた達と…モンスターの…数が…一致…していることから…神様達は…あなた達が…時間を…待って…死ぬのではなく…時間内に…死ぬことで…ゲームが…クリア…するのではないか…と言う…結論に…至ったの…》

『嫌な予感が当たっちゃったね、クロ』

「何となく気づいていましたよ。昔から麻紀さんの勘は、よく当たりますから」




昔から、よくない勘が当たってしまう私だが、ここまで来て当ててしまった

出来れば、当たって欲しくなかったのだけど…




《でも…神様達が…まだ…解明出来て…いないから…あなた達が…死んでも…クリア…出来るとは…限らないわ…。それに…全員が…死んでしまう…ことで…当初の…指示である…誰か1人が…生き残る…と言う…指示は…果たされなく…なる…。そして…もし…あなた達が…行きて…帰れたとしても…既に…死んでいる…彼らが…生き返るかは…不明よ…。それでも…やる……?》

「しかし、オレ達が死んでもモンスターの数が減らない可能性もあるのだよ」

『あ、そっか…』




私達が死んだらモンスターの数が減ると言うのは、あくまでも神様達の考え

確証はない




「なら、私が死にます」

「「『え?』」」




実験体に立候補したのは海野さんだった




「私が死ねば、モンスターの数が私達の数なのか、そうじゃないかが分かります」

『で、でも!海野さんじゃなくても…!』

「私は、みなさんとの繋がりはありません。だから、私でいいんです。それに、これで終わりじゃないでしょ?私が死ぬことでモンスターの数が減るなら、みなさんも後を続くわけですし。時間もないことですし、私で決まりでいいですね?」




海野さんは、弾が込められた銃を自分のこめかみに当てた




「先に向こうで、みなさんをお待ちしてますね」




海野さんは、私達が有無を言う間も与えないほど、素早く自分で自分の頭を撃ち抜いた

倒れてきた海野さんの体を支え、ゆっくりとその場に寝かせた




『モンスターの数は!?』

「1体減ったのだよ」




よかった

海野さんの死はムダにならなかった




「つまり、モンスターの数=オレ達ってことっスね」

「しかし、まだ問題が残っている。誰か1人生き残らなければならないと言うことだ」

「でも、そうしたら、モンスターの数も1体残ってしまう計算にもなるよね?」




残り時間は少ない

最善の策を練ろうと、みんな必死に頭を悩ませた




『もういいじゃん。みんなで死のうよ。待ってても結果死ぬんだし。みんな一緒なら怖くないってね!』




私がそう言えば、みんな目を丸くして、こっちを見ていた

あれ?なんかマズイこと言った?




「それもそうだな」




征ちゃんが小さく笑うと、みんなの表情も戻った




「そうっスね!モンスターを全て倒すって指示はクリアするんだし!」

「オレ達が死んでモンスターのカウント計が減ったとしても、クリア出来ない時点で残ったヤツも死ななければならないんだしな!」

「今ここで、誰が残るかを決めている時間もないのだよ」

「誰か1人が生き残ったとしても、モンスターの数も1体残ってしまいますしね」

『だったら、みんなで一緒に死のう!』




これで、話はまとまった

さぁ、フィナーレを迎えよう

それが、GOODENDでもBADENDでも、みんな一緒なら、それでいい…
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