脱出せよ! 【完】

□安息地
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「『はぁ〜』」




職員室へと入り、ドアを閉めると、安心感からか腰が抜けた




「お疲れ様」




腰を抜かした私達に、先に来ていた征ちゃんが備え付けられていた冷蔵庫に入っていたと言う冷えた水のペットボトルを渡してくれた

心身ともに疲れていた私達は一気に半分以上を飲み干した




『ありがとう。ところで、征ちゃんは誰と来たの?』

「オレと海野さんと笠松さんだ。今、二人はこの職員室内をくまなく散策してくれている」





征ちゃんから、この職員室と、そこから通じている校長室は安全で、この職員室には武器になるような物はなさそうだが、大きな救急箱、そして、冷蔵庫に人数分以上の水が用意されていることを聞かされた




「それと、気になるのがコレだ」




職員室と言うだけあって、ここには多くの机とイスが並べられていた

そして、職員室の上座

おそらく教頭が座ると思われる机にポツンと置かれたパコソン

他の机には何も置かれていないのに、ここだけはパコソンが置いてあった




「それと、これも見てくれ」




パコソンの横に置かれた何かを乗せるのであろう、プラスチックで出来た台

これには8つの穴が空いていた




「たぶん、これは“隠された言葉”を乗せる台だらう」

『つまり、8文字ってこと?』

「おそらくそうだ。だが、それが平仮名なのかカタカナなのか、漢字なのか、それともアルファベットなのかは分からない」

「全然検討もつかないな…」

『何か1文字だけでも見つけられたら予想がつけられるのにね』




3人でその台を見つめていると、笠松さんと海野さんが寄って来た





「とりあえず、すべての机の中を見たけど何もなかったぜ」

「そうですか。ありがとうございます」

『じゃあ、あとはこのパコソンだけだね』




みんなが見守るなか、代表で征ちゃんが電源を入れた

すると、すぐに起動し、画面に見慣れた人が映った





「桜!愛先輩!!」

〔〔麻紀!!〕〕





そこに映し出されたのは私の高校でのチームメイトの桜

そして、私の中学時代の先輩で、奈央先輩の同級生で、今もチームメイトの愛先輩だった

愛先輩は、つまり“キセキの世代”の先輩でもあり、火神くんやクロの先輩でもある




『何で桜と愛先輩がそこに!?』

〔分からない。目が覚めたらここにいたの〕

「見る限り、そこはあまり大きくなさそうだけど…」

〔見たまんまだよ。六畳くらいの部屋に、このパコソンと9つのモニターがあるくらい〕

『モニター?』





愛先輩曰く、そのモニターはこの学校の至る所に設置された監視カメラの映像が映されているそうで、先輩達は私達がスタートした時から観ていたと言う




〔けど、映像だけで音声はないの。だから、何がどうなって、アンタ達がグロテスクなゾンビみたいな奴らを倒しているのか分からない。ただただ、私達はホラー映像を観ている様だったよ〕

「分かりました。じゃあ、オレが一から全て説明します。麻紀、そこにマイクがあるだろう?」

『マイク?これ?』




征ちゃんが指差す方へ視線を向けると、職員室の入り口付近に設置された小さなスタンドマイクがあった




「まだ試していないが、おそらくそれは校内放送用のマイクだろう」

『ってことは、これで喋れば校内にいるメンバーに私の声が届くってこと?』

「たぶんな。だから、ソレで他のメンバーにオレ達が職員室にいること、職員室にパコソンがあり、桜さんと愛先輩と通信が出来る事を伝えてくれ」

『わかった!』

「それと、一度全然職員室に集まるように言ってくれ。時間が惜しいがもう一度作戦を立て直す」

『はいな!』




小さなスタンドマイクの横に赤いボタンがある

たぶん、コレを押せば流れるのだろう





『あー、あー。聞こえますかぁー?』




私が喋ると頭上のスピーカーから私の声が放送された




〈校内放送か!?〉

〈聞こえるっスよ!〉

〈聞こえるぜ!〉

〈聞こえるのだよ〉




私の声が放送されると、トランシーバーから返事があった




『うん、みんな聞こえてるね。えーっと…今、職員室に私と高尾くん、征ちゃんと笠松さん、海野さんがいます。で、職員室にはパソコンがあって、点けたら誠凛高校の愛先輩と私のチームメイトの桜がいました!』

〈何っ!?〉

〈えっ!?愛先輩が!?〉




私からの報告にみんな目を丸くしているような返事だった




『2人は別の所にいて、こちらの映像を観ているそうです!なので、もう一度作戦を立て直すために、一度みんな職員室に集まって下さい!』




業務連絡のように伝え終わると征ちゃん達の元に戻った




「ご苦労様。こっちもザックリとだが説明し終わったよ」

〔麻紀大丈夫!?アンタ、ホラー系苦手だったじゃん!?〕

『まぁね…』




パソコンを覗くと、心配した桜が声をかけてくれた

桜の言う通り、私はこう言う類は苦手だ

夏に毎年恒例のように放送されるホラー番組

何度アレのせいで夜のトイレが怖かったことか…

だけど、今は苦手とか言ってられない

命がかかってるんだから…
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