脱出せよ! 【完】

□捜索開始
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青峰、桃井、高尾、実渕、麻紀チーム




「高尾、周りにモンスターはいるか?」




高尾君は後方のドアから首だけを出して、左右を確認する




「いや、今はいないみたいだ」

「なら、行くぞ!」




私達のチームはもちろん、他のチームも大輝の合図で教室を飛び出た

この教室以外は電気が消されていて、周りがが見にくい




「止まれ。そしてしゃがめ」




大輝が、隣の教室のドアに手をかけながら、止まるように指示する




大輝と高尾君が、ドアの窓から中をそっと確認している

いきなりドアを開けた瞬間、モンスターが飛び出てくることも十分ありえるからだ

他のチームにも目をやると、同じ動作をしていた




「見た感じいなさそうだけど…」

「うん、大丈夫そうだ」




大輝と高尾君で中を確認すると、ゆっくりドアを開いた




「…電気は付かねぇみたいだな」




大輝がスイッチをカチカチと何度も押すが教室の明かりは付かない

電気が付いてくれたら、ありがたかったんだけど…





『みんなで、中を確認して。私は見張ってるから』




私だけは中に入らず、ドアの前で止まった




「危ないよ、麻紀ちゃん!」

「そうよ?女の子一人で…」

『ありがとう。けど、この中で拳銃の扱いに慣れてるのは私だけ。私が見張るのが適任です』

「頼んだぞ、麻紀」

『任しとけ!』




とは言ったものの、正直疲れてる

肉体的にも精神的にも…

拳銃のトリガーがあんなにも固くて、撃った時の振動が大きいとは思わなかった

おかけで、腕はパンパン

それに、いくらモンスターだとは言っても、私はモンスターを殺したのだ

気分の良いものではない

けど、ここで私がしっかりしなきゃ、丸腰の4人じゃすぐにモンスターにやられてしまう

それだけが、私を奮い立たたせた




『(けど、疲れる…)』




バスケの試合ほど動いてはいないのに、常に神経を研ぎ澄ませているために、精神的な疲労が溜まる

チラッと他のメンバーが向かった教室に目を向けると、同じ考えをしたリョーちゃん、火神君が教室の前に立っていた





「予備の弾だ!って、ライフル用のじゃねーか!!」

「あ、懐中電灯!!」

「こっちは…リボルバーよ!!」

「リボルバー?」

『回転式の拳銃だよ。ちなみに、私の持ってる拳銃は自動式拳銃。さっき征ちゃんが教えてくれた』




そして、そのリボルバーは戦闘力のある大輝に手渡された





『火神くん!!』




2つ先の教室の前に立つ火神くんに大声で呼びかけた

もちろん、目線は火神くんに向けないで




『こっちの部屋でライフル用の予備の弾を見つけた!』

「こっちでも、拳銃用の弾を見つけた。黄瀬の所も見つけたみたいだ!」

『今からそっちに向かう!』

「大丈夫かよ!?」

『こっちの部屋でもう一丁拳銃を見つけたから大丈夫!』




大輝にここを任せて…と言っても、大輝は拳銃を持つのも撃つのも初めて

だから、左は火神くんに、私は後ろ向きで走りながら右を警戒しながら、火神くんの元へと走る

電気の点いている教室

ここは、さっきいた場所

そこを通り過ぎようとした時に視界に黒い何かが目に飛び込んできた




『っ!?』




その何かに吹き飛ばされた瞬間に私の右腕に痛みが走った




「「モンスター!!?」」




吹き飛ばされた私は背中を廊下の壁に強く打ち付けてしまい、素早く立ち上がれない

だが、モンスターは私を目がけて腕を振り下ろそうとしている




『(ヤバイ…やられる!!)』




とっさにギュッと目をつぶるが、衝撃が来ない

その代わりに、1発の発砲音が聞こえた

ゆっくりと目を開けると、目の前にモンスターが倒れており、スッと消えていった




「大丈夫か!?」

「麻紀っち!大丈夫っスか!?」




火神くんの持つライフルの銃口が私に向いていて、銃口からはうっすらと煙を吐いていた

つまり、倒してくれたのは火神くんなんだろう

そしてリョーちゃんの銃口もこっちに向いていた

リョーちゃんも助けようとしてくれたんだね






『ありがとう…大丈っ…!』




体を起こそうとした時、再び右腕に痛みが走った

痛みの走る場所に目を向けると、制服の袖が少し破れ、血が滲んでいた




『っ…!!』




油断した

まさか、さっきまでいた所に…

全て倒したはずのモンスターがいるなんて…




『大丈夫!』




痛みはあるけど、深くはない

それに、いたのはあのモンスター1体だけのようだ

再び、静まり返っている

今の内にと、火神くんに予備の弾を渡すために走った





『はい。追加の弾』

「サンキュー。これ、こっちでも見つけた拳銃の追加の弾だ」

『ありがとう』

「おう。って、オマっ…血が!」

『大丈夫、大丈夫。そんなに深くないから』

「まさか、またあの教室にモンスターがいるとはな…」

『さすがゲーム…何でもアリか…けど、残念なのはキズが消えないこと…』




私の腕はまだズキズキと痛む

しかも、最悪なことに利き腕をケガしてしまった




「麻紀っちケガしたんスか!?」

『うん、ちょっとだけね』

「けど、利き腕だろ?大丈夫か?」




そこが心配だ

こんな腕で拳銃をぶっ放して支障はないだろうか…

いや、乗り切ってみせるさ

誰か一人でも生き残るなら私の腕一本くらい安いもんだ




『リョーちゃん達も油断しないで。モンスターはいつ、どこで突然現れるか分からない』

「了解っス!」

「わかった!」

『じゃあ、私は戻るから』

「援護する」

『ありがとう』




来た道を戻るために、リョーちゃんは左側を大輝は右側を、私はスタート地点であった教室に銃を向け、火神くんが援護のために私に銃を向ける





『戻った!』

「「了解っ!」」




私が大輝の元へと戻ると、私達は再び教室の前で警戒をする




「麻紀、さつき達がさっき救急セットを分けてた。何かしら持ってるだろ。オレが見張ってるから、手当してもらえ」

『ありがとう。すぐ戻る』




大輝にこの場を任せて私は暗い教室の中から、さつきを探した




『さつき』

「どうしたの!?って…何!?ケガしたの!?」




さつきよりも先にケガに気付いたのは実渕さんだった




「ケガ!?麻紀ちゃんケガしたの!?」




実渕さんの言葉にさつきは急いで駆け寄ってくれた




『さっきモンスターにやられたんだ』

「騒いでたのはそのせいか?」

『うん。隣の教室から突然飛び出して来たんだ』

「隣の教室って…」

『スタート地点の教室』

「そこでは、モンスター全部片付けたじゃない!」

『けど、現せたんですよ。…これはゲーム。あり得ないこともあり得てしまうんです』




みんな驚き、目を見開いた




『だから、注意して!この場にも突然現れるかもしれない!』




そう言うと、みんな身構えた

それでいい

神経を研ぎ澄まし、集中しろ

いつどこで襲われるかわからないんだから…




「と、とりあえず麻紀ちゃんの腕を治療しないと!」




さつきは、ゴソゴソとブレザーのポケットを漁り、ガーゼと包帯を取り出した





「麻紀ちゃん、包帯巻くからブレザーとブラウス脱いで。男は後ろ向いて警護する!」

「「はい!」」




さつきが指示すると、高尾君と実渕さんは素早くクルッと半回転して後ろを向いた

おネェ言葉でも実渕さんは男

素直に後ろを向く実渕さんに少し笑ってしまった




「ごめんね。消毒液はないの…」

『しょうがないよ』




ケガがあらわになった私の腕に、さつきは慣れたようにクルクルと包帯を巻いていく





「はい、お終い」

『ありがとう、さつき』




さつきが包帯を巻き終えると、再びブラウスとブレザーを着ると、何やら遠くで騒がしい音が聞こえ、銃声が何発か鳴り響く




『大輝、何が起こったの!?』

「黄瀬の所だ!モンスターが現れたっぽい!!」

「「「『っ!!』」」」

『私の後ろに!』




この教室でも、モンスターが突然現れるかもしれない

ここでは、私と大輝が拳銃を持ってる

けど、大輝は外を警戒中だ

だから、私しかみんなを守れない





「高尾!コレ持っとけ!」

「お、おう!」




ナイフが大輝から高尾君へと手渡された

受け取った高尾君もナイフを構える





『1体だけじゃないの!?』




銃声は引き続き何発も鳴り響く

鳴りやまない銃声に駆けつけたい気持ちはあるが、いかんせん距離がある




『(みんな…粘って…)』




私達はただ祈るだけしかなかった…
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