脱出せよ! 【完】

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彼女の名前は海野##NAME5##

神奈川の学校に通っていると言う




「学校名は?」

「藤金女学院です」




彼女が大人しく征ちゃんの質問に答えていくのを見て、突然襲ってくるような危険人物ではないとわかったのか、少し緊張を解いた




「聞いたことのない名前だな。黄瀬、笠松さん、知ってますか?」

「まぁ、オレは元々東京出身っスからね…聞いたことないっスよ」

「悪いがオレもだ」




みんな、手荷物は何もなく、ケータイすら持っていないので確かめようがない

申し訳ないけど、まだ完全に彼女に気を許しているわけじゃない




「キミは何部だ?」

「帰宅部です」

「中学の時は?」

「陸上部でした」

『バスケ部じゃないんだ…』

「え?」

「ここにいる全員は、みんなバスケ部なんだ。全員が顔見知りと言うわけではないが、みんな繋がりはある」




けど、彼女だけ何もない

顔も知らなければ、高校も聞き覚えがない

しかも、バスケ部じゃない

彼女だけ何も…




[ザザッ……]

「「「『っ!?』」」」




彼女への尋問が一通り終わると、教室に設置されていたスピーカーから雑音が聞こえてきた




[あー、あー。聞こえてるかな?]




静かな教室に声が響いた

声に聞き覚えはない

だが、声質からまだ若そうな男の声だとわかった




[ようこそ、諸君。ボクはこのゲームの製作者だ。マスターと呼んでくれ]




「ゲーム?」

「マスター?」




ここはゲームの世界なの?

SFじゃないんだから、そんなバカな話…




[これはゲームだ。ゲームと言うことは、つまりゴールがある。諸君にはこのゲームをクリアしてもらいたい]



「はぁ?何言ってやがんだ。冗談じゃねーぜ」




突然のわけのわからないマスターの発言に大輝が声をあげた




[おやおや、キミは血の気が多いようだね。そのわりには、ビビって彼女を起こせなかったようだけど]




「「『!?』」」




大輝の言葉に反応した?

しかも、どこかで私達を見てる?




「テメっ…どこにいやがる!?」




[キミ達とボクが顔を合わせるのは、キミ達がクリアした時だけだ。ボクに文句を言いたいのなら、まずはクリアしてみせろ]




さっきのユルい感じの喋り方から変わって、ドスの効いたような低い声




「クリアしてみせろ?はぁ?マジでふざけてんじゃねーよ!勝手に集めて何言ってやがんだ!さっさと、オレらを帰せ!!」




[何度も言わせないでくれるかな?クリアと言うことはゲーム終了ってことだよ?だから、クリアしないとキミ達は元の世界に帰れない]




『ねぇ!さっきから、ゲームだとか元の世界とか言ってるけど、どーゆーこと?ここは何なの?』




[ああ、キミはさっきの勇敢だった子だね。みんな怖気づいてたのに、キミだけは…]




『いいから、さっさと答えて』




[せっかちだなぁ…まぁ、いい。ここは、ボクの作り出したゲームの世界。キミ達が生活していた世界とは違った世界だ。いわば、パラレルワールドといったところかな。けど、ここに来たのはキミ達の意識だけ。キミ達本体は元の世界でスヤスヤ寝てるよ]




「そんな世界が…?」

「意識と本体が別って…」




[それぞれの場所にいた15人が一つの場所に集められている。信じられないよね?けど、事実だ。キミ達は意識だけだが、ちゃんと体はあるし、感覚もしっかりある。触覚や温冷痛覚もね]




「…オレ達が、このゲームをクリアしたら本当に帰れるのだな?」




[もちろん。それは約束する]




「逆に、クリア出来なかったら?」




[キミ達の意識はそこで途絶え、元の世界にいるキミ達の本体も、そこで息絶える]





「「『っ!?』」」

「ち、ちょっ!?何言ってんスか!?」




みんなマスターの言葉に息を飲んだ

息絶える?

つまり死ぬってこと?




「どーゆーつもりだよ!ワケわかんねぇよ!!そもそも何でオレら何だよ!!」





[うん、いい質問だね。ボクはたまたまキミ達を知ってね。興味を持ったんだ]




「「『興味…?』」」




[友情ごっこしているキミ達にね。たかが部活。なのに、その部活に熱中し、没頭している。そしてチームワークを重んじる。でも、チームチームと言うけど、じゃあそのチームがいざとなった時に何してくれるんだい?何をしてくれるわけでもないのに、チームチームって無理矢理縛り付けて…だから、証明してくれよ。そのチームの力とやらを…]





マスターは過去に何かあったんだろうか

マスターは過去を振り返るように言い放った





「そんな奴ら…他にもいるだろ!?」




[だから、言ったろ?たまたまって]




『その、たまたまのせいで私達は集められて、下手したらマスターに殺されるわけね…』




[殺すだなんて物騒なこと言わないでくれよ。キミ達がただゴールすればいいだけの話さ]




簡単に言ってくれるけど、これから何が起こるかはわからない

果たして、私達にクリア出来る代物なんだろうか…

嫌な予感がしてたまらない…
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