脱出せよ! 【完】

□序章
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楽しいショーの始まりだよ…















『んー…』




目をゆっくり開くと、そこには見慣れた茶色い板

これ…机!?

ってことは…ヤバッ…!!

いつの間にか寝ちゃってた…?




『あれ…?』




ガバッと勢いよく起き上がるが、机の上には置いてあるはずのノートや教科書がない

授業中に寝てしまったのなら、ノートや教科書が開いてあるはずなのに、そこには何もない

しかも、チラッと外を見れば真っ暗

夜まで寝てた…?

いやいや…

そんなはずないでしょ

もし、寝てたとしても誰か起こしてくれるでしょうよ…




『え…?は…?』




グルッと教室を見渡すと、そこには何人かが、私同様に寝ていた




『どーゆーこと…?』




そして、私の席の隣にはよく知った人物が…




『先輩…、先輩!』




白鳥奈央

彼女は私の中学の時の先輩

けど、先輩とは別の高校に進んだ

だから、先輩と並んで寝ているなんてありえない

そもそも学年も違うし…




「んー?」




先輩を揺すり起こすと、先輩は眠たそうに目をこすりなが、体を起こした




「あれー?麻紀?何でいるのー?」

『私にもわかりませんよ』




まだ寝ぼけているのか、間延びした声で話す先輩に教室を見渡すように言うと、先輩は教室の全貌を見ながら驚いていた




「え?何!?何事!?」

『だから、わかんないんですって!』



慌てふためく先輩を落ち着かせながら、私も理解に苦しみため息をついた





「…うるさい」



私達の声が大きかったのか、先輩の隣の席で寝ていた人物が体を起こした




『あ、征ちゃん…』

「…麻紀?それに奈央先輩まで…」




赤司征十郎

彼は私の中学時代の同級生

彼は京都の高校へと進学した

だからこそ、私達とこの場にいることに驚いていた




「どうなってるんだ…?」

「『さぁ?』」




どうなってると問われても、私達も目を覚ましたばかりだから、わからないとしか言えない




『とりあえず、みんな起こそうか…』

「…いや、待て」

『ん?』




みんなを起こそうと手を伸ばすと、征ちゃんに止められた




「ここにいるのは、ボク達を含めて15人。だが、よく見てみるんだ。ほとんどの者が二人一組…」




征ちゃんに言われて改めて見てみると、その通りだった

同じ制服、もしくは、同じ学校の制服を着た人物達が二人ずつ並んで寝ている




「だが、彼女はどうだ?」




4×4で並べられた机

だが、右一番奥の席には誰もいなかった

二人一組のはずなのに、欠けた席の隣の席で眠るロングヘアの彼女と同じ制服を着ている人はいない




「お前達は互いに違う制服だが、中学時代の先輩後輩と言う点では、二人一組と言える。そして、ここで眠る全員の顔をボクは知っている。…彼女を除いて」

「うん。彼女は私も知らない…麻紀は?」

『顔はよく見えないけど、知らない制服ですね』

「とりあえず、手分けして彼女以外を起こそう」




征ちゃんの言葉を皮切りに、三人でみんなを起こした









「あ?何なんだよ」

「ここ…どこ?」




桐皇学園からは、青峰大輝と桃井さつき





「ワケが分からないのだよ」

「まったくだな…」




秀徳高校からは緑間真太郎と高尾和成




「え〜?お菓子ないんだけど」

「お菓子どころの話じゃないだろう?」




陽泉高校からは、紫原敦と氷室辰也




「マジ何なんスか!?」

「ちょっと黙ってろ」




海常高校からは黄瀬涼太と笠松幸男




「ホラーか?ホラーなのか!?」

「落ち着いて下さい」




誠凛高校からは、火神大我と黒子テツヤ




「二人一組って、アナタ達は?アナタ達、制服が違うじゃない」

「彼女達は制服は違えど、中学時代の先輩後輩の間柄だ」




洛山高校からは、実渕玲央と赤司征十郎




「私達は、そこの“キセキの世代”と同じ、帝光中女子バスケ部の先輩後輩なんだよ」

『白鳥奈央先輩はクロ達と同じ誠凛高校、私、神崎麻紀は龍ヶ崎学園なんですよ』




みんな席から立ち上がり、まだ寝ている彼女だけをその場に残して教卓に集まった





「ちなみに、唯一寝ている彼女は、ボク達も彼女の存在を知らなければ、麻紀達も知らないそうだ」




征ちゃんがそう言うと、みんな彼女に目線を向けた




『ここにいるみんなの共通点って…』

「バスケ…だろうな」

「と言うことは、彼女もどこかの高校のバスケ部員なのか?」

「まぁ、聞いてみないとわからないっスよね…」




けど、誰一人として彼女を起こそうとはしない

得体の知れない彼女

これだけ顔見知りがそろっているにも関わらず、誰一人として彼女を知らない




「怪しいな…」

「怪しいですね…」

『じゃあ、起こしてみる?』

「「「「え?」」」」




彼女を起こそうと彼女に近づくと、リョーちゃんに止められた




「ちょっ!危ないっスよ!」

『けど、起こしてみないと何も始まらないじゃん?』

「そうっスけど!」

『じゃあ、リョーちゃん起こす?』

「え゛…」




得体の知れない彼女

この訳のわからない状況で、そんな彼女を起こすなんて危険なことしたくないんだろう

みんな一歩づつ引いた




『はぁ…話が進まないじゃん…』

「そうっスけど…」

「こんな状況で、ここら出るのも危険だしな…」

「どうするのだよ、赤司」

「そうだな…」

『全員起きたところでスタートとか?』

「何がですか?」

『さぁ?』




みんなお互いの顔を見合わせながら黙ってしまった




『もう、いいよ!起こそうよ!もしかしたら、彼女が何かヒントを持ってるかも知れないじゃん?』




だが、みんな苦笑いをするだけで、動こうとしない




『いいよね?起こすよ?』

「けど、麻紀さん、危険じゃ…」

『じゃあ、代わりにクロが起こしてくれるの?』

「えっと…それは…」




どいつもこいつも…




『デカい図体した連中がそろいもそろってビビりやがって…それでも男か!?キン○マついてんのか!?』

「キンっ…!?」

「ちょっ!仮にもお前女だろ!?」




後ろでギャーギャー騒ぐ男共を無視して彼女に近寄った




『ねぇ、起きて?』




2、3回彼女の体を揺すると、ピクッと彼女の肩が動いた

それを見た男共はいつでも逃げ出せるように構えた




「ん…」




彼女がゆっくり体を起こした




「え?」




彼女は、少し離れた距離にいる、みんなに驚いていた

見慣れない人物達に驚いたのか、警戒されていることに驚いたのか…

それはわからない




『名前、教えて?』
 

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