短編

□Clap LOG
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◎仗助君とおしゃれ



「仗助君って香水つけてる?」



オレのそばで彼女はすんすんと鼻をならした。



「ちょこっとだけな。多分整髪剤とかの匂いもあるんだろーけどよォ。」




彼女は上目遣いでオレを見上げる。



「そういうお前こそさァ、あまーい匂いするけどなァ〜?」



そう言って近寄ると頭をぱしんと軽く叩かれた。


抜け目ないやつだ。




「仗助君、靴とか香水とか何を見本にして買ってるわけ?」



「そりゃあ雑誌とかだろー。」



「ふーん…。」




彼女はしばらく黙っていたが、自分の服を詰まんで見回し、オレの方をまっすぐ見た。


真ん丸な瞳。ビー玉みたいだった。



吸い込まれるように顔を寄せていくうちに、どうしてもキスしてみたくなって、彼女の頬に手を添える。




「おさわりはなしよ。」


無情にも手は振りほどかれ、彼女はそっぽを向いてしまった。





「ねぇ、仗助君。」



後ろ姿の彼女は声だけがハッキリと凛としていた。




「お洒落なあなたの彼女が私みたいなファッションセンス皆無だと恥をかくでしょう?」



「いや、別に…」



「今週末はショッピングへ行きましょう。」




彼女は以前体ごとそっぽを向いたままで、しかし、にやにやと笑うその顔だけはハッキリと頭に浮かんだ。





「素直じゃねーなァ。」



不覚にもオレも頬の緩みを直せそうにない。





週末が楽しみだ。
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