短編

□マインドコントロール
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※気味が悪いはなし。




















「昔、幼馴染に命を助けられたことがあるんです。


泳げないのに不注意で川に溺れてしまったんですよ。


ほら、ここに、おなかに痣があるでしょう。
これはその時にケガをしてしまって、一生ここにあるものだと思います。



小さなころはこの痣が嫌いで嫌いで仕方なくて…


水着もセパレートのものは着たことがなくて、ずっと隠してきました。

今だからこそこうやって見せることができるのですけれど、昔はもう嫌で嫌で仕方なかったです。



ええ、幼馴染の話でしたね。
今隣にいる彼です。


漫画家してるんですよ、彼。
すごく人気な漫画ですよ。

宣伝みたいになっちゃいましたね。



彼とはずっとずっと一緒で、生まれてから今までずっと一緒。


小学校も中学校も高校も同じなんです。



運命みたいでしょう。
私たちもよく運命だねって言い合うこともあるんです。



今こうやってお付き合いを始めてどれぐらい経ったのかしら。

そう、そうだったわね。

付き合って二年と少しです。



小学校からずっと一緒だったのに遅すぎるぐらいのお付き合いですよね。




付き合ったのはどうしてだったかしら。


そうそう私が別の男性にお付き合いを申し込まれて、お付き合いしたんです。


本当に今考えるとなんで付き合ったのかしら、馬鹿らしいでしょう。
こんなに素敵な人が近くにいるのに。


お話がそれましたね。


別の男性とお付き合いしたことが彼の耳に伝わった途端、彼ったらまるでこの世の終わりだってぐらいに絶望して、私のところにやってきたんですよ。


お前が付き合ってるっていうのは本当かって。



私ったらなにも考えずにそうよって言ったんです。



それは彼を相当傷つけっちゃったみたいで、彼ったら答えたその瞬間に私の腕を引っ掴んで私を彼の家の物置に放り込んだんですよ。



その物置っていうのはね、昔、幼稚園ぐらいの頃、彼とかくれんぼしてたときに、彼の母親がドアの外に取り付けている鍵を閉めちゃってね、中は真っ暗ですごく怖い思いをしたことがあって本当にトラウマでね…、物置に放り込まれて私ったらパニックを起こしたわ。


彼ったら外鍵もかけて、私が心を入れ替えるまで外に一生出さないって言うのよ。



私、心を入れ替えるって何かわからなくて、ずっと泣いて彼を呼び続けたわ。
助けて、許して、出してって。


そのまま何日経ったかわからないけれど、ずっとそのままで、ごはんだけドアの下のペット用の出入り口が開いて放り込まれたわ。

ごはんの時以外は鍵がかかってるのかずっと開かなかったわ。


暗闇で考えるうちにね、私が彼を深く傷つけたから彼は私にこんなことをするんだって考えるようになったの。

それって彼がそれぐらいに私のことを深く愛しているってことでしょう?


そう考えたら怖い暗闇の中にも関わらず心が温かくなったわ。
嬉しくなったの。



彼がご飯を運んできてくれたとき、私は彼に謝ったの。
ごめんね、私が悪かったわ。あなたのこと好きよって。


扉が開いて、久々の光に目がちかちかしたけれど、彼のシルエットを見た瞬間に私たちは抱き合ったわ。



彼は閉じ込めて悪かった。君を奪われたくなかったんだ。
そう言って震えていたわ。


すごく体も痩せて、私のこと閉じ込めて、心に傷を負ったんだわって知ったとき、彼には私が必要って改めて認識したの。


私は彼のために生きるって決めたのよ。



これが私たち、幼馴染の話よ。」

































そう言って笑う友人は痣だらけだった。


道端で男とすれ違うだけで、浮気って心配しちゃうのよ彼ったらと隣にいる男の手を握る。



そして私は知っている。


隣にいる男は幼馴染などではない。



何故ならば私は友人とは生まれてから高校までずっと一緒で、私たちこそ幼馴染なのだから。



傷だらけで笑う彼女の左手の薬指には大きなダイヤが光る指輪があった。




幸せそうならいいのだ。


でも、でも、幼馴染と名乗るこの男は一体どのようにこの友人と出会い、このようになってしまったのだろうか。



最初はかなり問い詰めたのだが、彼女はこのような回答をずっと繰り返すのだ。



でも、私も最近おかしいのだ。

彼を友人の正式な彼氏と、幼馴染と認めるようになってしまった私はどうなっているのだろうか。








ふと彼を見るとニヤリと笑う口元が見えた。

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