それは何色。

□31話
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「起きろ、花子。」





低い、だけれども安心するような包容力のある声に揺られて私は目を開いた。






「空条…博士…?」





ほら貝に触れて、目の前が真っ暗になって…


私はどうやら本格的に意識を失っていたらしい。





空条博士の隣には億泰がいて、少しほっとした。


あたりを見渡すと、空条博士や億泰を視認できはしたが、ここはわりと暗がりの空間らしい。


空条博士の後ろに光の白い隙間が見えて、洞窟的な空間に感じる。







「これはスタンドというよりは呪いに近い現象だ。」





急に空条博士が話し始め、私はそれに耳を傾ける。






「というのも、どこにもスタンド使いがいない。あの貝自体もスタンド使いではないだろう。」





「どうしてそんな予測をするんですか?」





「あの貝は元々神社に祀っていたものらしい。それをオレは昨夜、ひょんな出来事で触ってしまった。すると体はこの通りだ。」







空条博士をよく見るが、とくに体の様子はおかしくない。






「気づいてないようだな。」





空条博士は光の隙間を指さした。





「見てみろ。」






隙間は何十人が一気に出入りできるような大きさであった。



顔を覗かせると、巨人が見えた。





先日岸部先生の家にある漫画を読んだ。



人類vs巨人、みたいな漫画だったのだが、それがあったから瞬時にこれが人だと認識できたのだろう。


巨人からしたら私の体は1ミリにも満たないのではないかという大きさの違いがある。



そしてその巨人は見たことのある顔ぶれだった。








仗助君、康一君、由花子…






「私たち、縮んでいるのね…!?」






私は空条博士を見つめると空条博士は無言で頷いた。






「しかも、どうしてか貝の外には出れねーんだよ。」






億泰がため息をつくが、この大きさの比ならまず仗助君たちには私たちは見えないし、踏みつぶされる可能性を考えたらむやみやたらに出れない方が安全ともいえる。








「スタンドで内壁を攻撃したが、オレのスタープラチナも、億泰のザ・ハンドも効かない。」




「ザ・ハンドが効かないってことは物理的なパワーの問題ではなさそうね…。」






縮んでスタンドパワーが弱くなったのかとも思ったが、ザ・ハンドに関してはパワー以前に削り取るのを拒絶されているのだから、もうこれは手の打ちようがないわけだ。







「神社に祀られてる神聖なもの、ねぇ…」





こうなってくると本当に神頼みしかないのだろうか。









その時だった。



急に体がひっぱられる感覚がする。





「え?」



見えない力で体がふわりと浮いた。




しかし、それが私には瞬時に何かわかった。







「億泰!空条博士!!手を!!!」




三人で手を繋ぐが、二人は何が起こっているのだと奇妙な顔をしていた。








私たちの体は出口に向かって、そして目の前が白く眩しくなった。











ドタドタっと大きな音とともに私たちは折り重なってこけた。




さすがに大の男二人を掛け布団にするには苦しい。







「大丈夫か!?」




それを見てかけよってきたのは仗助君たちで、その体の大きさは私たちと変わらない。







「どういうことだ…?」





何故ほら貝を抜け出せたのかと不思議な顔をする空条博士に私は少し得意げになった。






「ほら貝の中にいたザ・ハンドがほら貝の外に私のスタンドで喚べたのなら、ほら貝の外にある私の一部と、ほら貝の中の私はスタンドでくっつくかしらと思ったんです。」





髪の毛を一束おいてきました、と私は笑う。








まさか縮んでほら貝の中に二人がいるとは思わなかったが、外に喚びだしたザ・ハンドは大きないつもの姿だった。



ということは地上に姿を現せば無条件に体はもとに戻るという仮説だ。




あとはほら貝に入る前に切った髪の毛に気付いた仗助君がクレイジーダイヤモンドで治してくれると地上の髪の毛に引き寄せられてくっつく私、といった図である。








「そういう作戦は先に言ってくれよな。」





わりとわからなくて焦った、と仗助君は微妙な顔をしていた。











結局このほら貝は一体何だったのかわからないまま、私たちの夏の別荘生活は幕を閉じたのだった。
















「別にお前のせいじゃねーぞ。」





帰りの電車で仗助君がふいにそんなことを言ってきた。





私は何を言われたのかわからずに首をかしげた。




それをみた仗助君はだからよォ〜、と言葉をつづける。





「別にスタンド使いに襲撃されてるの、お前のせいじゃねーし、オレらがお前のせいでまきこまれてるとか思うの禁止。」





どうやら言葉にしなかった思いは仗助君にはお見通しだったらしい。







「禁止なんて言われても思うのは私の自由よ。」





仗助君は私をじとっと睨んでため息をついた。






「じゃあ思うのは自由だ。けど、だからって自己犠牲みたいなのやめろ。」





「自己犠牲って?」





「連絡もせず、非常時に一人で敵倒しに行ったり、あやしいものに勝手に触ったり。」






「なんのことかしら。」










思い当たる節しかない行動に軽口で返していたら、頬をぐっと掴まれて、キスされた。






仗助君らしからぬ行動に一瞬目を見開いたが、仗助君は自分でした行動に照れたのか顔をぷいとそむけてしまった。





田舎の電車だから幸い人は少なかったが、空条博士や億泰、由花子、康一君にはしっかり目撃されていたようで、なにやってるんだこいつらという顔で見つめられている。








「大事な彼女が傷つくのなんて見たくねーだろ?」




「大事な彼女は今社会的な傷を負ったけれどね。」








相変わらず顔が真っ赤な仗助君に免じてこれから気を付けてあげる。

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