それは何色。

□30話
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別荘や昨日空条博士が調査していた地点を探してもどこにも空条博士の姿はなかった。







博士を最後に見たのは私で、私がもっとちゃんとしていれば博士は消えなかったかもしれない。






自責の念にかられる私に気付いた仗助君は


「承太郎さんは強いから大丈夫」



と笑ってくれたが、その顔はいつもほど軽快ではなかった。









「最後に見たのは海辺で、だったっけ?」






康一君の問いかけに頷く。







「ここよ。」





昨日空条博士と立っていた場所に私たちは立った。






あの夜の海の真っ黒な恐ろしさはまるでなかったように、今は波で揺られる透明なきらめきが眩しかった。





何の悪さもしないような顔を持つそれが夜はあんなに恐ろしかったのだから、なんだか笑えてくる。









空条博士はどこに消えたのだろうか。



私は記憶を探るが、話したときには空条博士が消えるような理由が見当たらない。








「スタンド使いの襲撃じゃない可能性も考えた方がいいかもな。」




「でも、承太郎さんがよォ〜、無言でいなくなるなんてことあるのかァ?」









さまざまな意見が交わされる中、私は海を見つめていた。





波が押して引いて、なんの変哲もない水。









「海に呑まれたのかしら。」





私の間抜けな独り言は案外聞こえてしまうものらしく、呑まれるってなんだと返事が返ってきた。







「なんだか、海ってこわいじゃない。」




夜の海が人を呑み込んでいきそうだったと話すと億泰にメルヘンだなと笑われた。






「とりあえず承太郎さんを探しつつ、スタンド使いの可能性を考えてみんなで行動しようぜ。」





仗助君の提案を採用した私たちはみんなでとりあえず別荘に戻ることになった。









別荘に戻ると由花子がコーヒーを入れてくれた。




机に置かれたカップを回していくと、どうも数が一つ多い。







「由花子、カップが多いわよ。」




「どうしてよ、仗助、億泰、康一君、花子、私で五つよ。」





たしかに机の上には五つカップがある。




周りを見渡す。








「億泰は…?」




先ほどまでそこにいた億泰の姿はなかった。





「嘘だろッ!?」




仗助君たちはとっさにスタンドを出すが、その場はシーンと静まり返り、特になんの変りもない。







「ザ・ハンド…」



私の声に反応してみんながこっちを見た。





私の傍らには億泰のザ・ハンドがいる。




私のスタンドで喚んだのだ。








「ザ・ハンドが喚べるということは億泰はすぐ近くにいるわ。」




私のスタンドの射程距離は本体、もしくは本体の体の一部が3メートル以内にあることである。


本体と本体の一部では操ったスタンドの出せるパワーは違い、これは確実に本体が近くにいるときのパワーであることが私にはわかる。






「近くっつってもよォ…どこにいるんだよ…?」





私周辺の3メートルに億泰の姿は当たり前だがないのだ。




康一君がカップが置かれている机の下を覗く。









「ねぇ、これ、どう思う?」






康一君の言葉に私たちは机の下を覗くと、奇妙な色のほら貝を見つけた。




見たところスタンドではないようだが、こんなものを全員が別荘内にいれた記憶がない。







「スタンド使いが貝である、とかいうオチじゃあないでしょうね?」




由花子の言葉に誰も何も言わなかったのは、その可能性をきっと全員が考えていたからだ。







「私、この貝に今から触ってみるから、もし何かあったら頼むわね。」





私はそう言うと貝に手を伸ばしたが、その手は遮られる。





仗助君だ。








「なんでお前が触るんだよ。」





「私にはスタンドを操る能力があるわ。もし、これがスタンド使いならある程度の対処ができるわ。それに…」





私は仗助君の手を払って、その貝に触れた。






その瞬間、すっと目の前が暗くなった。






億泰の馬鹿。


スタンド使いに気をつけようってときにこんな怪しいもの触らないでよ。





でも、ごめんなさい。








それに、に続く、言いかけてやめた言葉はこうだった。






「どうせ狙いは私なのだから。」






空条博士と億泰は巻き込まれたにすぎないのだ。

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