それは何色。
□28話
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「この付近に温泉があるらしい。」
調査の際に地元の漁師から聞いたという空条博士は別荘の椅子に座ってビールをぷしゅっとあけた。
やっぱり調査メインじゃないかという気持ちと、温泉への興味が半分半分の私は続きを促す。
海水浴でへとへとになった私たちは夕食をBBQで済ませ、お風呂の相談をしていたところであった。
「ここの裏手にある山の上の温泉で、山道がそこそこ険しいから人があまり行かないようで、ゆったりお湯につかれるらしい。」
「それまさか混浴とかいうオチじゃないでしょうね?」
「きちんと管理されている温泉だ。きちんと男女別で別れている。」
空条博士の言葉に納得し、私たちは目を見合わす。
「行くっきゃねーよなァ?」
仗助君の声に頷いたのが数分前である。
「どうしてこうなったのかしら…」
私は一人、山道で歩いていた。
最初はみんなで歩いていたのだが、途中でシカを見つけたとかで仗助君と億泰が消え、由花子のお手洗いに康一君が付き添ったため、結果一人で温泉に向かうことになった。
「みんなスタンド使いに襲われるという感覚はないのかしら?」
独り言に答えてくれる相手もおらず、余計に空しくなっただけだった。
にしてもこの山道、とんでもなく長い。
地元の人が寄り付かないというのは険しさと言うよりこの長さもあるのだろう。
ふと山の頂上付近をみつめると温泉の更衣室にあたるであろう建物と湯気が見えた。
山頂と言ってもそこまでの高さはない。
「これ、道沿いに行かなくてもそのまま行けばショートカットできるんじゃ…。」
私は山の急斜面に足をかけたのだった。
「動物追ってたら温泉ついちまったなァ…。」
「まだ康一たちもついてねーんじゃねェのかァ〜?」
動物を追いかけまわしているうちに既定の山道から外れたオレと億泰は茂みの中をかきわけていた。
どうやら知らないうちに温泉の方面に向かっていたらしいオレたちは茂みをかき分けながらも温泉独特の硫黄の臭いを捕らえていた。
「そろそろつくと思うんだけどよォ〜…。」
先ほどより確実に硫黄の臭いは濃くなっていた。
「おっ、なんか開けた場所に出そうだぜ?」
茂みじゃない場所を歩くのは久々に感じる。
ばっと体をだすと温泉に出たようだ。
温泉の湯舟や設備は人工的なもので、定期的に手入れされているもののようで、新しく、綺麗であった。
自然の茂みで囲われたその温泉は幻想的だ。
「更衣室寄らずに温泉はいっちまったみてーだな。」
そう言って億泰の顔を見ると億泰は前のある部分を見て顔を真っ赤にしておかしな表情をしていた。
「億泰…?」
どうしたのかと問いかけるが、億泰は口をパクパクして何も言葉を発さない。
まさか新手のスタンドかと身構えた瞬間だった。
「仗助君、億泰、ここ女子風呂なのだけれど、貴方たちが女性であるということを私、今の今まで知らなかったわ?」
聞きなれた声の主は終始笑顔でそう告げながらこちらにゆっくりと歩いてきた。
シルエット、というよりごめん一瞬見えたんだけど裸だ。
恋人の裸を見たという興奮よりも、冷静に自分たちの状況を察し、どう謝るべきか考えていた。
あろうことか女子風呂にオレたちは侵入し、花子の裸姿を見てしまった。
由花子はまだついていないらしい。
その素肌を隠すこともなく、にこにこと笑いながらオレたちの方にい歩いてくる花子が正直スッゲー怖い。
「あー…えーと…花子…?」
「なぁに、仗助君?」
「これはなんつーか…その…事故、でよ…?」
「事故。へえ…?」
「あの…悪いことした!んじゃ!!」
オレは恐怖で顔を真っ白にしている億泰を抱え、女子風呂を去ろうとしたが、その肩をぽんと叩かれた。
「ただで済むと思うなよ。」
今まで聞いたことのないような低い声でそう告げられた。
「いいお湯だったねー。」
康一がそう由花子に告げると、由花子も頷いた。
「ところでさ、仗助君と億泰君はなにやったか由花子さん、わかる…?僕、なんか聞けなくて…。」
「どうせ馬鹿なことをしたんでしょ。それより康一君、別荘付近のコンビニで飲み物を買っていかない?」
楽しそうに歩く康一と由花子の後ろにはいつも通りに歩く花子と顔の色が変わるまでぼっこぼこにされた仗助と億泰がふらふらと歩いていた。