それは何色。
□27話
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目の前には青い空、白い雲。
そして
「エメラルドグリーンの海ってカンジっすねー!これはよォ〜!!」
夏休みに入った私たちは海にやってきた。
メンバーは私、仗助君、億泰、由花子、康一君、そして空条博士である。
先日のスカイ・ウォーカーの事件もあったので、付き添いとしてついてきてくれたという空条博士はどちらかというと海洋生物が見たかったのではないかと疑うぐらいに私たちそっちのけでクラゲなどの観察を行っている。
海は由花子の家が管理する別荘に付属しているプライベートビーチというやつだそうで私たち以外の姿はない。
というか由花子金持ちすぎる。
先ほどビーチにたどり着いたのだが、海を見るや否や仗助君と億泰、康一君はそそくさと水着に着替え、その透明な海面に向かって走り出した。
水着は服の下に着こんでいた私と由花子も荷物を軽くまとめた後、服を脱いで、波打ち際で足を水に浸した。
海なんていつぶりだろうと思っていると、由花子から明らかに呆れたような顔で水着を指摘された。
「なんでスクール水着なのよ。」
「水着なんてこれしか持ってないもの。」
「あそこに明らかに落ち込んでる彼氏が見えるけど?」
「仗助君どうして落ち込んでいるのかしら?」
「期待してた彼女の水着が学校指定のスクール水着だったからでしょう。」
「スクール水着の方がマニアには需要が高いわよ?」
「平然と彼氏をそのマニア扱いするあなたに驚きよ。」
由花子は会話を早々と切り上げ、うっとりと康一君を見つめる。
確かに康一君はチャーミングで、やるときやる子だと思うのだけれど、由花子のその愛情と言うか執念は本当にすごい。
「ほかの男見つめるとかオレ妬いちゃうんだけど…?」
気づけば仗助君が近くにいた。
さきほど盛大に水浴びしたはずなのに髪形に崩れは見られず、どういう固め方をしてるのか気になって仕方ない。
「日射量きついから今日はこんがりやけそうよ。」
「それ、やく違いだから。」
背伸びをして彼の頭に手を伸ばす。
「ゼラチン…?」
「よくわかったな。」
彼の頭は薄く透明なゼリーのようなもので固められていた。
「あんまり日射量きつすぎると温度上昇で溶けちまうんだけど、水浴びするには最適だろ?」
シンクロの選手はプールの水質汚染を防ぐためにゼラチンで髪固めると聞いたことがある。
「ゼラチンで固めるととるの大変じゃないの?」
「クレイジーダイヤモンドで原料別まで戻せば簡単にとれるぜ。」
彼の頭の回転には本当に驚く。
髪形の維持にスタンドを使うという名目は少々大げさに感じはするのだが。
「二泊するのに来て早々海で遊んでたら明日以降飽きちゃうんじゃない?」
スタンドを用いて水の掛け合いを行っている億泰、康一君、由花子を横目に私は苦笑した。
水かけに本気になりすぎだ。
「明日が晴れると限らねーしよォ、こんなきれいな海で遊べるのも一生に何度あるかわかんねーぜ?」
だから花子も遊ぼうと私に手を伸ばす仗助君を見つめるとなんだか胸の奥がきゅうと切なくなった。
「そんな言い方されると、これからそんな機会がないみたいじゃない…。」
私の言葉に仗助君は一瞬目を丸くしたが、にっと笑うと私の頭をわしゃわしゃとした。
「今日はめずらしくかわいーこと言ってくれるけど、それは旅行でテンションあがってるから?それともオレがかっこよすぎて?」
髪がぼさぼさになった私に仗助君は少し熱っぽい視線を一瞬だけ送って、手を握った。
「返事はオレが都合のいいようにとらえるからしないで。」
手を引かれて足首だけに感じていた海水の冷たさが水位をあげる。
私は微笑んでその手を握り返した。