それは何色。

□26話
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仗助君が泊まりにきたあの夜。

岸辺先生とあやうく戦争になりかけたその後。




私たちは眠りについた。


同じベッドで。




客人用のベッドを貸し出す義理はないと無茶を言われた私たちは私のベッドで一緒に寝ることになったのだ。




仗助君はガッチガチに緊張してて、なかなかおもしろかったけれど、私はすんなりと眠りについて、夢を見た。



奇妙な夢だった。





私と仗助君は幼い容姿で歩いている。



歩いて、歩いて、たくさんの景色を見るのだけれど、その果てに大きな崖にたどり着く。





「これじゃあ渡れないから遠回りしましょう。」



私がそう言うと幼い仗助君はあの人懐っこい笑みで笑う。





「二人なら空だって飛べるんだぜ?」




仗助君は私の手を握る。



すると私たちの体は重力に逆らってするする浮かび上がっていく。




私の体は仗助君より高く上がって、空に吸い込まれそうで、怖くなる。





「仗助君!怖い!!空に落ちちゃうわ!!」




「花子、大丈夫っ!」





仗助君はそう言って私の手をぎゅっと握る。




仗助君の体も空にするすると上がって、私たちは同じ目線になった。






「ほら、大丈夫。」




どう言って、私の手を引いて空を歩く仗助君。







目覚めたときはとても奇妙な気持ちになった。



きっと人の温かさを感じながら眠るのは久しぶりだったから。
















どうしてこんなことを思い出すのかわからない。




私は未だ、終わりのない階段を上がって降りてを繰り返していた。





もしかしたら仗助君とはこのまま一生会えないのだろうか。



夏休みにみんなで遊びに行くと約束したのに。




そういえば、夏休みまであと一週間をきっていた。







由花子や億泰、康一君、岸辺先生…


みんなの顔が頭に浮かんだ。






スタンドに襲われたタイミングはわかるのに、どうしても抜け出せない。







どうしようもなく悔しくて私は唇をかみしめた。




強く噛んでいるのに鉄の味さえしない。













「そんなに強く噛んじゃあ、せっかくの別嬪の顔が台無しじゃねェの?」





聞きなれたその声に顔をばっと上げた。






あの夢でみた顔よりも大人びてはいるが、相変わらず人懐っこい顔だった。






「仗助君…!?」





都合のよい幻覚であるかと思ったが、唇や右手に痛みを感じて顔をしかめた。




右手からは血が流れ、口の中は鉄の味がした。






「えっ…スタンド攻撃は…?」




「この病院に入ったやつがスタンドの攻撃にあうなら、病院に入らずに病院にいるやつを連れ出せばいいってことだろォ〜?」




仗助の後ろから億泰がひょっこり顔を出した。





ザ・ハンドを使えば造作もないことだということだろう。



周りを見渡すと私は仗助君に支えられ、座っていて、病院の外である。



傍らには岸辺先生がぐったりとしていたが、その顔色はよかった。




きっと仗助君が治したのだろう。







「仗助君と億泰はどうしてここにいるの?」





先ほどから気になっていたことを問う。



仗助君は報告キチンとしろよと最初に私の頭を軽く小突いてから、噴上裕也が顔色を変えて岸辺邸を飛び出た私を見て、岸辺邸を確認して、仗助君たちに連絡してくれたようだ。



山のふもとからすでに私は二人につけられていたようで、気づけなかった自分が情けない。






「まぁ無事でよかったよ。」




仗助君はそう言って私を何度も抱きしめるので、億泰は見せつけるなよと顔をしかめていた。







「病院のスタンド使いは!?」




仗助君たちの登場で完全に忘れていたのだが、病院に潜むスタンド使いはどうなったのだろう。





それに関しては仗助君たちは表情を苦々しくするばかりだった。






「スタンドは見たんだけどよ、逃げられたんだ…。」




「そう…どんなスタンド?」




「小さな色白の金髪の鬼みたいな見た目で、自分のことスカイ・ウォーカーって名乗ってた。」






スカイ・ウォーカー。


何故だろうか。あの夢を思い出した。







「スカイ・ウォーカー。第二の吉良として君臨する者だって……。」

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