それは何色。

□23話
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※流血表現あり





放課後、話があると仗助君に言われ、駅前のロータリーにたどり着いたのは先ほどである。




前回のお泊まりは夜中に岸辺先生が攻め込んできたため、あやうく戦闘となりかけた。



仗助君の気配を感じて旅行先から真夜中に戻ってくるなんて妖怪か何かだろうか。





そしてその仗助君であるが、本日は日直のため、私に駅前まで先に行かせた。



みんなが待ってるだろうと彼は言っていたが、みんなって誰だ。




どうせ由花子たちかと思ったが、集合場所にはまだいないようだ。




というより集合場所にはデカい男が二人居座っていて少し近寄りづらい。





一人は老人で、もう一人は成人した男だ。


二十代半ばか三十代前半だろうか。
めちゃくちゃ派手なコートには見覚えがあった。




たしか吉良が死んだときに近くにいた奴も同じようなコートを着ていた気がする。



あの時は知らない間に吉良が瞬間移動して車が轢かれたりとかであまりちゃんと見れていなかったが、こんな色のコートなかなか見ないのでその色だけは鮮明に覚えていたのだ。






とはいえ、知らない人間をじろじろ見つめるのは悪いと思い、少し離れた場所で仗助君を待っていることにした。




しばらくすると遠くから康一君と由花子の姿が見えて、とりあえず安心する。




今日日直だった億泰と仗助君がその後ろから走ってくるのが見えた。






その瞬間だった。





「知り合い見かけると安心するよなァァ〜〜〜?」




不快な粘り気を感じさせるような声の主は私の隣にいた。




スタンドである。






狐と犬を足したような姿をしたそのスタンドはゲラゲラと笑いながら私を見つめている。






「レッド・ホット・チリペッパー」




私はとあるスタンドを喚んだ。



このスタンドの主である音石という男は現在杜王町にはいない。


しかし、私は吉良を追う調査の途中で音石という男の毛髪を手に入れていた。





私のスタンドは本体の正体がわかっており、その持ち主の体の一部さえ半径3メートル以内にあれば本体の操るスタンドには劣るが、そのスタンドを操ることができるのだ。




どうやらこの音石のスタンドは相当の無茶をしたようで、スタンドがどんな全快状態であろうとぼろぼろの状態なので、戦闘には大変向かないのだが、知り合いのスタンド使いが射程距離にいない今、これで対応するしかない。






「なんだァァ〜〜?そのスタンドはよォォ〜〜〜?」




相手スタンドはにやにや笑いながら距離を詰めていく。




ぼろぼろとはいえど、レッド・ホット・チリペッパーのスピードはなかなか速かったはずだ。



私は早い者勝ちとばかりに攻撃をする。


しようとした。






私のチリペッパーが相手に到達する前に相手スタンドは吹き飛んだ。



相手スタンドが元いた場所の近くには青い大男のようなスタンドがいた。






「まさか早速戦う羽目になるとは…やれやれだぜ。」





声の主は先ほどの白いコートの男だった。




男は私を一瞥してから相手スタンドを見やる。





ふっとんだ場所は運悪く、仗助君と億泰の近くだったようで容赦なく攻撃されているのが見えた。







「お前が仗助の言ってた田中花子か。」





「やっぱり仗助君の知り合いの方だったんですね。」






白いコートの大男は空条承太郎と名乗ると元いた老人の隣に戻った。







「花子!!」




スタンドをぶっ飛ばしたであろう仗助君と億泰が走ってくる。






「ケガないか!?大丈夫か!?」



「大げさよ。」





結局あのスタンド使いはどんなスタンドの能力をもち、何が狙いだったのだろうか。



チリペッパーより無残な姿のスタンドは由花子の髪の毛に捕縛され連れてこられた。






「僕が到着するまでに何があったんだよ。」




背後から聞きなれた声が聞こえ、反射的に振り向くと岸辺先生と噴上君がいた。


スタンドにおそわれたことを簡潔に説明すると、岸辺先生はある方向を指さした。



「あそこにいる男がいきなり血を噴き出して倒れたけど、アイツが本体なのか?」




指さす先には中年の男が失神寸前といった形でぴくぴくしていた。






















駅前は目立つということで私たちは場所を変えた。



もちろんさっきのスタンド使いは引き連れてきた。






「さて、話を始めよう。」




承太郎さん曰くはこうだった。



私と由花子が謎のスタンド使いに襲われ、吉良で終わりじゃないと言われたことを仗助君は承太郎さんに伝えたそうだ。


私と由花子を襲ったスタンド使いはスピードワゴン財団のスタンド使いを扱うところに引き渡し、その結果、杜王町でスタンド使いを生み出す実験を行うものがいるという情報を手に入れたらしい。



悪用されるとよくないと調査と対策のために派遣されたのが承太郎さんともう一人のおじいさんである。




こういった内容を私たちは告げられた。




「スタンド使いを生み出す…?」



スタンド使いというのは先天的なものだと思っていたが、どうやらここにいる大半はそうではなかったらしい。


特別な弓と矢に射抜かれ、能力を発現させたというのだ。




「もしかしたら杜王町にまだあの矢があるってことじゃ…!?」



康一君が顔を青ざめさせた。




「こいつに聞くのが早いんじゃないのか?」




仗助君は視線だけをスタンド使いの男に送った。





男はさっきから助けてくれとか殺さないでくれとか呟いて震えていた。





「尋問って一回やってみたくありません?」




私はそう言って男と視線を合わせる。




にっこりと笑った私に対して男は涙目で救いを求める言葉を述べるのみだった。





全員がオイオイオイと言いたげな空気を感じながらも私は男の手を取った。






「ネイルアートって知ってます?」




男は返事を返さない。




「あれってすごく面倒なんです。マニキュアが爪からはみ出ないようにとか乾くまで維持とか。でも、最近はすごく素敵なものもあって、つけ爪って聞いたことあります?ほら、私してるんですけど。これ、便利なんです。元々作ってあるネイル済みの爪をくっつけるだけなんで。このネイル作ったの、前、スタンド使いに…あなたのお仲間さんなのかしらね?女の、奇妙な世界に人間を引きずり込むスタンドの持ち主と戦った日なんです。そのスタンド使いの方、結局、仗助君にスピードワゴン財団に引き渡していただいたのだけれど、もちろん引き渡す前に聞くことは聞いたの。彼女、快く答えてくれたわ。ただ、そうなるまでに両手の爪はなくなっちゃったみたいなのだけれど……、アナタはどうでしょうね?」







男は震えあがって、話すから!!と懇願してきた。



どうぞ、と伝えると男は口を何度かパクパクさせてから話し出した。





「スタンド使いを作るのは薬物で期間的に精神エネルギーを具体化させる能力を得る実験で…オレはそれの検体で…成功した検体はある指令を出される……。」




「指令って?」




「女の写真を見せられるんだ…。田中花子ってやつを殺せって。」








少なからずとも衝撃は受けた。



身に覚えがないのだから当たり前かもしれない。







全員がその答えには絶句したようで、しばらく無言の時間が流れた。






私は何か話そうと口を開いた。



その時だった。





男は真っ二つに裂けた。


真っ赤な血を飛び散らせながら。






男の血を真正面から浴びた私は両親が死んだときのことを思い出した。





幼い私を守るように死んだ両親。



どうして私だけが生き残ったのだろう。











「花子!」




後ろから仗助君に抱きしめられ、顔を覗き込まれる。







「大丈夫か!?」




「心配しすぎよ、仗助君。」







何事もなくそう返すと私は元々男だったそれを見た。




凶器らしきなにかは見当たらない。







「……口封じで殺されたようだな。」





岸辺先生は顔をしかめてそう言った。







濃い血の臭いの中、私は目を閉じた。





どうして殺されようとしているのだろうか。

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