それは何色。
□21話
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※ちょっと下品。
「今日から一週間ほど、私以外家にいないのだけれど、どこかの日にちで泊まりに来ない?」
そう持ちかけた時の仗助君の顔を私はこの先一生忘れることはないだろう。
驚きすぎると人は表情が抜け落ちることを私は初めて知った。
「花子の家って…露伴の家だよな??」
「えぇ、岸辺先生の家ね。」
「露伴、連載休むの?」
「取材旅行で海外に行くらしくて、二週間分の原稿を提出して今朝出かけたわ。」
「とんでもねー奴だな…。」
この際岸辺先生がいかにどうであるかは重要ではないのだ。
同居してから岸辺先生に対してさまざまな思いを、主に家事の文句言い過ぎだとかいうマイナス面なのだが、抱く私であるが、今回は岸辺先生がいない日々をゆっくり羽を伸ばそうという魂胆である。
「でもよ…露伴のやつ、オレのこと嫌いじゃねーか?家に上げていいのかよ?」
「嫌がらせに最適と思って。」
当たり前のようにそう返すと仗助君は苦笑いして、それもそーだと頷いた。
「ところで泊まりに来るの?」
私の問いかけに仗助君は行くと小さく返事をこぼした。
なぜ彼は私にすきすきとアピールする割にこういった、恋人としてのやり取りに度胸がないのかわからない。
彼の顔はすでに赤い。
泊まりに来たときは茹でダコにでもなるのかしらなんて思った。
まぁ、これが二日前の話である。
そして、本日、仗助君が泊まりに来る。
放課後、いつも通りの帰り道で、いつもと違うこと。
家に帰るまで、家に帰ってからもずっと一緒に歩くこと。
「夕食、何が食べたい?」
「花子が作るのか?」
「何よその青い顔は。」
夕食の相談をすること。
新婚とかってこんな感じなんだろうか。
ふとそう思ったが、ばかばかしいと首を振った。
そもそも私たちの恋人関係は茶番だし、そんな日が来るとは思えない。
岸辺邸は何度か来たことあるらしい仗助君だが、部屋の中にあまり入ったことはないらしい。
「だだっ広いよなァ〜、この家。」
「そうね。」
「掃除大変じゃねーの?」
「掃除は案外フツーよ。」
問題は料理、と付け加えると仗助君は苦笑いした。
フォローしないあたり正直者だと思う。
「そういや夕飯どーすんの?」
「レトルトかカレー作るかどっちがいい?」
カレーの材料はあるのだが、いまだに成功したことのない料理である。
仗助君はそれを聞くと、人懐っこい笑みをこぼして、
「一緒に作っちゃう?」
と、ニンジンを持ち上げた。
なんだか久々にこの笑い方の仗助君を見た気がする。
私は頷いて料理の準備を始めた。
そういえば最近岸辺邸バイトばかりで仗助君に一切構っていなかったからなぁ。
そりゃあ仗助君のあの笑い方も懐かしく感じるわけである。
そんなことに思いを巡らせていたら、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
突然のことに一瞬驚いたが、犯人は仗助君以外いないわけで。
「どうしたの仗助君。」
振り返りもせずに問うが、一切返事は返ってこない。
確かに仗助君の香水の匂いがきつくするから仗助君であることは間違いないのだが、さすがに不審に感じて振り向こうとすると、頭を前に向くように固定された。
「あー…チョットさ、オレ今情けない顔してるからこっち向かないで…。」
「いつも情けないわよ?」
「うっわー…傷つくー…。」
後ろから抱きしめられるという慣れない状況に対して私は意外にも冷静であった。
しばらくすると、仗助君の困ったような声が降ってくる。
「スゲー言いにくいんだけどよ…」
「なに?」
聞き返しても仗助君の歯切れは悪い。
しばらく彼は言いよどんでいたが、意を決したように口を開いた。
「その…下半身の……勃ったんだけど、どーすべき…?」
「はぁ?」
まさかこんな爆弾発言を投下されると思っていなかった私は今だかつてないぐらいにとり乱したワケで。
「まさか仗助君、この流れでエッチしようとか持っていくつもりじゃないでしょうね…?」
急に血の気が引いていく自分がわかる。
彼の腕から脱出しようにも割としっかりホールドされているので難しい。
スタンドを使うべきかと思った瞬間、タンマ!と仗助君の声がした。
「別にそんなんじゃなくて!とりあえずトイレ行きたいんだけど場所わかんねーのと、黙ってバレるのより言ったほうが気まずくねーかなって思っただけで、まさか花子とエッチなんて考えてないから!!イヤ、考えはするけど、実行はしない…」
「そんな生々しいこと言わなくていいわよ。」
トイレはあっちの角、と言うと彼は頷いてトイレまでなかなかのスピードで向かった。
自由になった体であるが、なんだかさっきまでの仗助君の体の熱が残っていて、変な気分になる。
私まで彼に毒されてしまったのか。
ふと考えたけど急に勃ったって、理由が私と密着したこと以外にないわけで、なんだかそういうことを考えると、彼が私を性的に認識してることが生々しくわかってしまい、ため息をついてた。
お泊まり会はまだ始まったばかりである。